約 1,076,782 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2218.html
「ところで、どうしてフーケがここにいるのかしら?」 一段落ついたのでとりあえずオスマンの待つ学院長に一同揃ったのだが 今更になってキュルケがフーケが気付いたのかそう聞いてきた。 「来たくて来たんじゃあない」 どこか諦めたような表情でそう言ったが、当のプロシュートはフーケの肩に肘を置き涼しい顔をしている。 「……そういう事。もう年なのに大変ね」 二人の様子からある程度は察したのか、少しばかりの同情を含めて返したが、さりげなく禁句を入れているあたり流石と言えよう。 「だ、誰が年ですって?わたしは『まだ』23よッ!」 「あら、23といえば十分婚期を逃しているんじゃございませんこと?」 「小娘が…どうやらあんたとは決着を付けた方がよさそうだね…」 「よろしくてよ、おばさん。この微熱のキュルケ、謹んでお相手つかまつりますわ」 売り言葉に買い言葉とはこの事か。 あっという間に二人のボルテージが最高潮にまで到達しオスマンの前という事もすっかり忘れ睨み合い。 「おいオメーら、話あんだから大人しくするか別の場所でやれよ」 「「五月蝿い!」」 二人ともやる気満々という具合だが、今ここでんな事されても邪魔なだけだ。 今にも杖を出しそうな二人の間に無理矢理割り込むと、ガッシリと二人の首に腕を首に回す。 俗に言うアームロックである。 そして、続けて一つだけ宣告をする。これで止まらないのならどうなろうと知ったこっちゃあない。 「……なんなら、その程度の年の差なんぞ分からないようにしてやってもいいんだがよ」 テーレッテー こうかは ばつぐんだ! 二人の頭の中にそんな音楽と言葉が聞こえてくるとほぼ同時に、同じような震えがプロシュートの両腕に伝わってきてきた。 「い、いやねぇ、じょ冗談よ、冗談。ほ、ほらこんなに仲良し。ねぇ?」 「そ、そうさ。わたしももう気にしてなんか……だ、だからその腕をーーー!」 ぎこちなさ6割増しで無理矢理笑顔を作り出し、互いに向き合うキュルケとフーケを見てやっとこさ腕を放したが人選間違ったかもしれんと思えてきた。 「なんで、きみはそういう事をしても怒られんのかのぉ」 そうして聞こえてきたのはご存知オスマンの羨ましそうな声。 「わしなんて…わしなんて尻撫でただけでも蹴られとるというのに……」 そう言いながらフーケに触ろうとして近付き、綺麗なカウンターを繰り出しオスマンが3回転半しながら地面に倒れた。 流石に、教え子に手を出さないだけマシなのだろうが、知ったこっちゃあない。 「クソ……馬鹿ばっかだ……」 一応、こっちは真剣にやってるんだからもう少し合わせろと言いたいのだが、とりあえず今は説教している暇は無い。 倒れたオスマンを無理矢理立たせると、本命の話を出す。 「でだ、アルビオンに『密航』したいんだが、なんか手段を出せ」 「うん、無理」 瞬間、少し乾いた音が部屋に鳴る。 間髪入れずに返してきた返答に突っ込んだ…もとい軽く殴った。 「一秒も経ってねーのに無理ってのはオレをナメてんな?それともボケたか?この際ついでにもう200歳ぐらい歳とってみるか?ええ?」 「いや、ホント無理。『密航』って事はバレたくないって事だからのぉ。補給艦に潜り込んでもバレるよ?それは」 戦時だけにそういうチェックは厳しい。 リトル・フィート、マン・イン・ザ・ミラー、メタリカなら気にしないでいいが、そうもいかない。 さすがに正規乗員で無い限り老化してもバレるし、バレてもいいのなら相手を始末すればいいだけなのだが、状況が違う。 おまけに、アニエスに知られた以上はなるべく早く行動したい。 「……他は」 「ふーむ。そういえばスカロン店長が女の子達を連れて、慰問に行くとかもしれないとか言ってたような」 「却下だッ!」 ああ見えて口が堅い事はしっているが、何されるか分かったもんじゃあない。 今のところ、唯一にして明確なプロシュートの弱点というやつだろう。 「へぇー、あんたにも苦手な相手が居たのかい。こりゃ今度話を聞いてみないとね」 フーケが笑いをかみ殺しながら仕返しかと言わんばかりにそう追求してきたが、それだけは避けねばならない。 「…そういや、襲ってきた連中は全滅したって報告するんだったよな」 「そうじゃな。学院の生徒を人質に取ろうとしたんじゃから、宮廷の連中が見逃すはすはあるまい」 「……ならオメーが生きてるってのは不自然なわけだ。全滅したんだからな。つーこたぁ分かるか?オレの言ってる事」 フーケの方へ視線を向け、指を鳴らしながら手をフーケの前に出した。 顔が青くなっていったあたり、どういう状況か理解できたらしい。 「ま、まさか……」 「60歳ぐらいに抑えといてやるから安心しろ。なに、一瞬だ」 一気に後ろに後ずさる。その素早さたるや台所の黒いアイドル顔負けというやつだろう。 そうなるのも当然と言えるのだが、しかしながらここは学院長室。 オスマンの私室ともいうべき場所であるからには、そんなに広くはないのですぐに壁に突き当たった。 「わたしのそばに近寄るなぁぁぁあああああ」 四体倒地し顔だけこちらに向け必死で叫ぶ。 が、唯一この場でこの能力がヤバいと理解してくれそうなキュルケは思いっきり顔を逸らしているので助けになりそうもなく 肝心のプロシュートもかなりの無表情で手を伸ばしてきているあたり止まりそうにない。 「そ、そうだ!わたしに危害を加えない事が条件だって言ってそれを飲んだじゃないか!」 「何言ってやがる。きっちり元に戻るんだから危害を加えるって事にはならねーよ それに、オメーがそのままで向こう行くとバレた時に厄介だからな。今のうちに慣れさせといてやるよ」 思い出したかのように学院に向かう前の条件を切り出したが 本人全く一切の聞く耳を持たず。プロシュート的に危害=負傷、元に戻らないぐらいの老化。なので問題無いのである。 「暴れんじゃねーぞ。加減が狂って手遅れになっても知らねーからよ。大体オメー一回食らってんだろーが」 「い、いや…さ、触わらないで、お願いだから…」 泣きそうかつ逃げようとしている女に無理矢理触ろうとしているとなるとちょっと絵的にアレだが、本人にその気はまったくなく ただ単に直食らわせてフーケだとバレなくしようとしているため、むしろスタンドパワー使うんだから感謝しろという具合である。 「まぁ、渡る方法もまだ分かってないんだし、今はいいんじゃないかの」 「……そいつもそうだな」 オスマンの言を聞いて2~3秒考えたが、持続力Aとはいえ老化させっぱなしというのもパワーを使う。 スタンドを戻し手を引いたが、一杯一杯なフーケを見て『死にゃしねーんだから大した事ぁねーだろうが、このマンモーニが』 と内心思っているのはご愛嬌。 もっとも、悲しきかなは価値観の違い。プロシュート的には60歳はまだ大した事は無いが キュルケやフーケの価値観としては60歳というのは寿命一歩手前に等しいのである。故に ――今、この瞬間だけありがとう…… と、秘書時代を通してこれ程オスマンに感謝したのは初めてかもしれない。 仙人っぽい外見のオスマンが本気で仙人のように後光が指して見えたのも仕方ない事なのである。 そんなフーケをガン無視して別の場所から思いっきり高圧的な声。 「歳食ってんだから、何か知ってんだろ。頭絞って考えろよ」 「人使い荒いね君…わし、一応ここで一番偉いんだけど」 二人を対比すると、ちょっとボロ雑巾気味のオスマンと 椅子に座ってはいるが、机に足を投げ出して思いっきり偉そうにしているプロシュート。 この事から敬意など一欠けらも持っていない事が凄くよく分かるであろう。 「ウルセー、それならそれなりの仕事してみせやがれ」 地位や立場より、実績や報酬を重視するタイプなので、いくらオスマンが偉大なメイジなどと言われていても、見ていないのでこういう扱いである。 おまけに、例の一件からただのエロジジイと認定しているため、恐らく余程の事が無い限りこの態度は覆るまい。 「悲しいのぉ…年寄りはもっと丁寧に扱うべきじゃよ。もっと敬老精神というものを持ちたまえ」 「生憎、オレはそういうモンは持ってねーし オメーみたいな化物にんなもん必要ねぇ。手ぇ抜いたつっても直食らって外見が変わんねーってのはどういう事だ」 「化物って酷くない?わしはただの可哀想な年寄りじゃよ」 「ほーう。可哀想な年寄りってのは、そいつの足元にネズミを潜ませたりすんのか?なんなら寿命でくたばらせてやってもいいんだぜ?」 やっとこさ立ち上がったフーケの足元に小さいハツカネズミがそこに居た。 「な…!このジジイいつの間に!」 「おお、モートソグニルわしの為に、お前は本当に可愛いのぉ。よぉ~~~しよしよしよしよし」 「オメーがやらせたんだろうが」 どこぞの元医者のようにモートソグニルを撫で回すオスマンに冷静に突っ込んだが、いい加減その髭面をブン殴りたくなってきた。 「知ってようが知っていまいが……二秒やるから、知ってる手段ってやつを吐け」 「案外せっかちじゃな。もっとゆっくり真実というものを考えてみたらどうかね」 「ウーノ(1)」 「ちょ、ちょっと待とう。な?ほら、よく言うじゃろう『ゆっくりしていってね!』って」 「ドゥーエ(2)。じゃあいっその事永遠にゆっくりしてみっか?え?」 『ゆっくりしていってね!』という言葉にやたらムカき2を早め、ついでに大往生させてやろうかとも思ったが それより先にオスマンが答えを出してきたので何とか止まった。 「仕方ないのぉ…竜にでも乗れればいいんじゃろうが、気難しい生き物じゃからな」 「…ああ、そういやそんな手があったな」 野生のやつなんぞ乗りこなす気なぞ全く無いが、アテは一つある。 少々カオスな状況の学院長室とは所変わって女子寮の部屋の一室。 その中で青い髪、ご存知タバサが多少眠そうにしながら本を開いていた。 「おねえさまに言われたとおりにあの人を連れてきたのね!シルフィ偉い!」 と、部屋の窓一杯に映っているのはこれまたご存知のシルフィードだ。 「おねえさま、ご褒美は美味しいものがいいのね」 「……二個?」 「きゅいいっ、きゅいーーーッ!きゅい!」 「三個……?イヤしんぼ」 と、そこに部屋のドアから軽いノック音がしてきた。 「きゅい?誰かきたみたいだけどいいの?」 「構わない」 襲撃なんぞがあったのだから、今日の授業は無いだろうから慣習に従い本を読む事にすると決めたのでどうやら無視する事を決め込んだようだ。 ぶっちゃけ言えば、シルフィードですら邪魔と言いたいのだが、一応の功績があるので好きにさせているという具合だ。 しばらく反応が無かったが、少しするとさっきより大きい…ドアを叩くような音がしてきたが手早く『サイレント』をかけ 音がしなくなると満足したような表情で本に向き直った。 だが、何時の時代も個人の平穏というやつは破られるものである。 勢いよくドアが開かれ…もといブチ破られたためだ。 キュルケならアンロックで開けるだろうし、他の生徒達にこんな真似をする者はいないので杖を引き寄せ身構えたが 聞こえはしないが、重苦しい音をさせながらこちらに近付いてくる人物を見てサイレントを解いた。 「居るんなら返事ぐらいしやがれ。それとも聞こえなかったとかいうんじゃあねーだろうな」 破壊力Bのスタンドで思いっきりドアをブン殴った、ご存知プロシュート兄貴である。 「……やっぱり似てる」 「あ?何がだ」 過去、ルイズがタバサの部屋のドアを爆破したという黒歴史的な出来事を思い出しての感想だが、プロシュート自身は知った事ではない。 「何か用?」 普通というか、こういう乱入者は魔法でお引取り願うのだがそうはしない。 手短にそう言ったが、ここまでやるからには何かあるのだろうと思う。 もっとも、杖を向けた瞬間スタンドとかいうやつで容赦なく攻撃されるだろうという考えもあったからだが。 「ああ、オメーに用があるってわけじゃあねーんだが」 「じゃあ何」 用が無ければ、人の部屋に乱入したりはしない。タバサの疑問も至極当然といえる。 「オレが用があんのは……外に居るそいつだ」 「ぎゅい!?」 睨み付けるかのような視線を窓の外のシルフィードに向けると、どこか詰まったような鳴声が返ってきた。 「あんな場所から何の準備もなく落とされたからな…本当にオシマイかと思ったよ…いや、マジに恐れ入った」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ という擬音を背景に部屋の真ん中に進んだが、窓の外のシルフィードは何かこう、テンパっている。 (シルフィード) (は、はい…!) (説明して) 質問は拷問に変わっているんだぜ?というような尋問が行われたが、シルフィードの答えは至極簡単である。 「つまり、シルフィードに落とされた?」 「100点満点だ。褒美をやりてーとこだが、そうもいかねぇ」 (メイジじゃないって事を忘れてただけなの!悪気は無かったのね!) (黙ってて) (きゅい…) 「オレは今からお前にごく簡単な質問ってやつをする。イエスかノーか二つに一つってやつをだ」 こういった尋問役は、本来ホルマジオかメローネ(変態的な意味で)なのだが、まぁそうも言ってられない。 「オレはそいつに簡単なスカイダイビングをさせられたわけだが……それはオメーの指示か?どうなんだ?答えろよ…」 タバサの後ろからそう質問したが、これがブチャラティなら汗を舐めているところだろう。 よくよく考えれば、あのチームで一番マトモそうなヤツが実のところ一番変態とも言える。 結局のところギャングにマトモな神経のヤツなど一人も居ないという事か。 まぁ、タバサ自身は汗なぞかいてないし動揺もしていないが。 「シルフィードが見つけた時にあの場所に連れてきて欲しいと言ったのは事実」 (おねえさま……) 小さい窓から部屋の中を無理矢理覗き込んでいるシルフィードは気が気ではない。 下手に答えれば『ブッ殺した』という過去形で語られそうな展開になるかもしれないと思っているからだッ! そして、そんなシルフィードをに構わず、いつものようにタバサが言った。 「だけど……落とせとは言ってない」 (きゅいぃぃぃ!お、おねえさま、それはぁぁぁぁ!) (五月蝿い) 「まぁ、あんときオメーはブッ倒れてたからな……つまり、あいつが勝手にやったって事でいいんだな?」 「そうなる」 (う、売ったぁぁぁ!おねえさまひどいの!シルフィきっとすっごく怒られちゃうのに!…ハッ!) シルフィードが気付いた。プロシュートの物とは違う冷たい雪風のような視線がこちらに向けられている事に。 (お、おねえさまのあの目…シルフィの前に並べられたご飯を見るような冷たい目なのね…『残念だけど20秒と持たない運命なのね』って感じの!) ぎゅい~、と絹が裂けるような鳴声と共に恨みがましい目をタバサの方に向けていたが それよりも数段目立つ、スゴ味を感じさせる眼を見てさらにテンパる事になる。 しかも、その眼が無駄に足音をたてながらゆっくりと向かってくるのである。 (うう、怒られるだけで済めばいいけど……だけど、お肉が食べられなくなるのはイーーーヤーーーーー) どうやら、老化させられると判断したようで年老いて歯がボロボロになった自分を想像したらしい。 空を飛べる翼があるのだから逃げてもいいのだが、そうすると今度はタバサにお鉢が回るかもしれない。 自分の身体(主に食を司る部分)か主人のタバサか。 シルフィードにとってどちらも譲れる問題ではないため、未だ窓の外に止まっている。 そんな事やってるうちに遂にプロシュートの腕がシルフィードを捉えるべく、まるで鎌首を上げ獲物を捕らえる蛇の如くゆっくりと持ち上げられたッ! (きゅいぃ…最後に沢山お肉食べたかったのね…) もう諦めたのかシルフィードの頭の中には今まで食べた美味しかった物が次々と現れては消えていっている。 走馬灯に近いものがあるのだろうが、全て食的なものしか現れていないあたり、本人の欲望が最優先されているといっていい。 「待った」 しかし、そんなシルフィードに救世主現れた! 意外!それはタバサッ! 「確かに、私が命令したわけじゃない。でも……使い魔の責任は主人の責任」 「すると、オメーが身代わりになるって事か?」 そう問うと、タバサが小さく頷いた。 (……で、でもダメなの!シルフィよぼよぼのおねえさまなんか見たくない!) (…変わりにお肉は抜き) (お、おねえさまぁぁ!ならシルフィも一緒!) 何かこう、主人と使い魔との絆が一層強まったようだが、何話してるかさっぱり分からないプロシュートには知ったこっちゃあない。 「悪りーが、オレとしては誰かの責任を他人が身代わりに被るってのを認めるわけにはいかないんでな」 誰かに身代わりになってもらうようでは、そいつは一生成長しない。 まぁ、ギャングの中にそういう連中はものスゲー居るわけだが。 右手を窓の外のシルフィードの額に当てる。 タバサが少しばかり批難めいた目でジーっとこっちを見ているが特に気にしない。 (お肉…でも、おねえさまが無事ならそれでいいの…でも、お肉…) (シルフィード…) あくまで食事の比率が大きいのか、最後まで気にしていたようだが目を閉じ、来るべき老化を覚悟していたが 次にシルフィードが感じたのは老化による疲労などではない。 シルフィードが感じたのは、額を数度ノックするような音。 まぁ実際竜の硬い皮膚を人の手がコツコツと叩いているのだからノックとも言えなくも無い。 「…きゅ、きゅい?」 「結果論としちゃあ、あれで先手取れたようなもんだからな。穴も開いてねーし、あの件に関しては貸しって形で終わりにしといてやるよ」 元より、落とされた事で来たわけではなく、目的は別にある。 「で、だ。オレとしてはその貸しを今すぐ返して貰いたいってわけだ」 「返す?」 「こいつ貸せ」 そう言って指差すのは勿論シルフィードだ。 「そいつなら、アルビオンに行けんだろ。前も行ってたしな」 普通の竜なら無理だが、シルフィードならタバサ経由でなんとかなる。 この際、どんな小さな貸しだろうと利用してシルフィードを使うと決めたようだ。というよりそれしか方法が無いのだが。 「どうしてアルビオンに?」 そりゃあこれからドンパチやろうかという場所に行くというのだから、その疑問も当然だ。 「あー?気に入らねぇやつが居るからな。厄介な事になる前にそいつを始末しにいくだけだよ」 死者に老化が通用しない事もあるが、やはり偽りの精神を与えるなどという誇りを踏み躙るようなやり口が気に入らないというところが大きい。 この際、いい機会だからボスにやる予定だった分も全部纏めてクロムウェルにやっちまおうという事である。 人、それを八つ当たりと言う。 「……クロムウェル?」 「よく分かったな。まぁ、オメーもアレを見たから分かるだろうがな」 プロシュートは簡単に言ったが、一国の皇帝を一人で始末するという事である。 クロムウェルをガリア王に置き換えれば、それがどれだけ遠い道かタバサにもよく分かる。 それを気に入らないというシンプル極まりない理由でやろうというのだから呆れるしかないというやつだろう。 少しばかり怪訝な表情でこっちを見てきたタバサに気付いたのか、さも当然という風にプロシュートが返した。 「ああ、そういや言ってなかったな。オレ達は向こうじゃそれが本業だ。 さっきのは条件付いてたから手間取ったが…次からは遠慮する必要なんてねーから楽なもんだ。 スタンド使いでも無い連中なら、オレにとっては何人居ようが関係ねぇ」 射程距離半径200M。全員がオスマンみたいなのなら問題だが、最初からフルパワーで老化させていけば 軍隊組織そのものを相手できるとまでは思っていないが、純粋な対人に限れば千人だろうと、その気になれば例え一万人だろうと関係ない。 つくづく暗殺というより殲滅向きな能力だと思うが、ホワイト・アルバムよりはマシというところか。 むしろ、少数で風の遍在でも送り込まれるほうが余程厄介というべきだろう。 そう言うとどこからか、何か興奮気味の声が聞こえてきた。 「やっぱり凄いのね!おねえさまも手伝ってもらえばいいの!」 (シルフィード!?) (きゅい!?…ま、間違えたのね) どうやら少しハイになって間違えたらしいが後の祭り。しっかり聞かれてしまっていたりする。 「おい……何か言ったか?」 「……気のせい」 「どっかで聞いたことあんだよ…今のは」 部屋を見たが他に人は居ないし、何よりタバサの口調ではない。 となると、残ってるのは窓の外に居るシルフィードなのだが、これは竜だ。 と思ったが、ここはバカデカイ島が丸々一個空に浮いてるようなブッ飛んだ世界であるし 竜というのはファンタジー映画基準からすれば結構口が利けたりする生物だ。 タバサは口を割りそうにないし面倒なので直接本人(本竜)に聞いてみる事にした。 (何言われても答えちゃダメ) (わ、分かってるの。シルフィ絶対喋らないのね) 「口が利けるってんなら答えろ。答えない場合は『目の中に親指を突っ込んで殴り抜ける』」 親指どころか、拳が丸々入るだろうという突っ込みは横に置き、選択肢YES or yes。拒否権一切無しの質問…もとい尋問に 一秒も経たずに綺麗サッパリ洗いざらい全部まとめて喋ってくれました。 「メンドクセーことしやがる。大して変わんねーだろーが」 「そうでもない。韻竜は数が少ないから」 「オレはそれより、そいつを使い魔ってのにしたオメーの方が気になるがな。さっきも言ったがマジで何モンだよ」 使い魔=メイジの実力がここの方程式だ。となると、その珍しい韻竜を召喚したタバサもかなり珍しい部類に入ると踏んだ。 「きゅい!それはシルフィが説明するのね。おねえさまはガリア王家の王女さまなの」 「ほー、それが何でこんな所に居やがる」 「それはとっても悲しい話なの…おねえさまのお父さまは暗殺されて、お母さまも食事に毒を盛られておかしくなっちゃったのね」 ここまでは下手な本の中にもよくある話だ。というより、型に嵌り過ぎてむしろ拍子抜けしたという方が正しい。 「で、それをやったのが、こいつの親父の兄貴か弟ってとこか?」 「その通り!よく分かったのね」 「よくある話じゃあねーか。ま…こんなに近くにいるとは思わなかったが」 王族と聞いても態度は一切変えない。メローネじゃないがタバサの生まれや育ちが何だろうとどーだっていいのである。 「それだけじゃないのね!おねえさま、ずっと昔から北花壇騎士団っていうのに入れられて 危険な任務を与えられてるの…この前だって吸血鬼を退治しろだなんて言われて、死ぬかと思ったのね!」 「シルフィード、それ以上は言わないでいい」 「でも~…」 「……ダメ」 「……分かったのね」 「ヒネたガキだとは思ってたが、そりゃあそういう事やってりゃあそうなるな」 パッショーネの構成員の中にも今のタバサぐらいの年齢のやつは腐るほど居る。 ナランチャやフーゴ、ペッシあたりがそうだ。 だが、シルフィードの言い方からすると、それより遥かに前から任務をこなしていた事が理解できる。 ヒネたガキと言ったが、この場合むしろ汚れ仕事を押し付けられているあたり、よくもまぁこの程度で済んだなと感心したぐらいだ。 「で、汚れ仕事をこなしても報酬は殆ど無くて拒否権も無ぇ。おまけに、少しでも反抗しようとしたらお前か母親が始末されるってとこか」 「それでも復讐しようとして生き延びてきたら、こうなったってわけだ。よくやんぜオメーもよ」 「……知った風に言わないで」 珍しく感情を含んだ声でタバサがそう呟いたが、それこそそういう風に言われる筋合いは無い。 「ガキが誰に物言ってやがる。オメーこそ知った風な口利いてんじゃあねぇ…!」 「組織に良い様に使われるってのは、オレ達が一番よく知ってんだよ 仲間二人見せしめに殺され、それでも何もできずに飼い殺しにされて、やっと掴んだボスの手掛かりを追って反逆したが 戻ってみりゃあ、あいつらもボスもくたばってやがった。オメーはまだいいぜ。復讐する相手がいるんだからな…ッ!」 言い終えると同時に重い音が部屋に響いた。 素手で思いっきり部屋の壁を殴ったのだが、壁から少量の血が流れ落ちている。 ボスはブチャラティ達に倒されたが、落し前は自分の手で付けたかったというのが本音というところか。 自分の知らない所で復讐対象が倒されていた場合、後に残るのは振り下ろす相手の居ない拳と同じだ。 「…ちッ!どうもガラじゃあねーな。物に当たんのはギアッチョの担当だ」 勢いに任せて壁をブッ叩いたが、それでもどうにもならん事ぐらい理解している。 まぁ、素手でカーステレオをブッ壊すギアッチョなら今頃壁はボコボコであるのだが。 「って事だ。その冷めた面見てるとますますオメーがリゾットに見えてきたぜ。 こっちの仕事が片付いたらお前の方も考えといてやるよ。ただし、高いがな」 「考えておく」 「迷うことないのね!おにいさまに手伝ってもらえばすぐ終わるのに」 ……なんだってェェェェ!? 妙に聞き慣れない言語がシルフィードから飛び出たため、タバサとプロシュートの思考が同時に一瞬止まった。 「……おい、てめー今なんつった」 「手伝ってもらえばすぐ終わるって言ったのね」 「違う、その前だ」 「きゅい?おにいさま?」 「それだ。どういうこった、ええ?第一オメー幾つだ。どう見てもタバサより年上だろお前」 兄貴ならともかく、『おにいさま』と呼ばれたのは人生初めてだ。しかも、自分より明らかに長生きしてそうなナマモノにである。 「だっておねえさまの他にお話してもいい人だし、だからそう呼ぶって決めたの」 「わたしは話してもいいとは許可してない」 「きゅい……でも、失敗は前向きに生かさないとダメだと思うのね」 「オメーまでリゾットみたいな事言うんじゃあねぇよ。で、歳は」 「よく覚えてないけど200歳ぐらいだったと思うのね」 「200!?オスマンのジジイと同じでババァじゃねーか!」 「きゅい!?おにいさま酷い!人間と竜は寿命が違うのに!」 人間としての的確な突っ込みにシルフィードが竜として抗議したが、そこにタバサが付け加えてきた。 「竜の200歳は人間で言うと10歳ぐらい」 「……14~5秒ってとこか」 「……なにが?」 人間一人寿命寸前に追い込むのに一秒程度だが、竜相手だとそのぐらいかかるという事だ。 火でも吹いてくれれば別だが、やはり竜は敵に回したくない相手というところだろう。 「オメーがタバサ以上にガキってのは分かったが、もう少しどうにかしろ。気が抜ける」 「嫌なの?それじゃあ…美味しそうな食べ物っていう意味の…『生ハムさん』ってのはどう?」 「それはマジで止めろ」 そのままじゃねーかと言う突っ込みは置いといて、『生ハム』とそのままの意味で呼ばれるのは遠慮願いたい。 ペッシを魚料理、リゾットを雑炊、メローネをメロンと呼ぶようなものと思えばご理解頂けるだろうか。 「それじゃあやっぱりおにいさまなのね」 「……あー、もう好きにしやがれ」 生ハムと呼ばれるより幾分かマシだとしたが、少しばかりペッシとデルフリンガーが懐かしくなってきた。 まぁ、シルフィードの声で兄貴と呼ばれるのもどうかと思わないでもないが とりあえず悪い方向に転んでは無いので少なくとも当面それで妥協する事にした。 プロシュート兄貴――人外の舎弟?二匹目ゲット! 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/457.html
よく分からない状況だが、とりあえずなんだか素晴らしくヤバイ気がした。 何故って人間が飛んだりする訳無いからだ。そりゃなんか飛びそうな奴らがイタリアにはいたけどさ! そこで私は行く宛もないが逃亡を試みた。が、やっぱり銀髪に捕まった。私を抱えると奴は先を行く小娘の後ろを歩き出した。 何処へ行くつもりだ。離せ!寄生してた分際で宿主に背くか! 私はもがいたが、所詮亀は亀だ。勝てる訳がなく、自分の力では奴から逃れられないのを悟った。 -何?役立たず独身銀髪眼帯男から逃げられない?逆に考えるんだ。『寝ちゃえ』と考えるんだ- …神の声に従い、抵抗するのを止め睡眠態勢に入りそのまま寝ることにした。よくよく考えてみれば、餌が食えればそれでよかろうなんだな……どうせ……今……やることも…………無い………しな………… 目を覚ますと何処かの部屋に連れて来られたようだった。ちょっと前、あのコロネやワキガ男達が暮らしていた部屋に似ている気もするが、やっぱり違う。 大体こんなベッドなんかなかったし。そのベッドの上に例の小娘が、椅子に奴が座っていた。 私が見るまでずっと話していたらしく、小娘は欠伸をした。どうやら眠くなったらしい。 …寝る?確かにベッドはある。しかし、この部屋には一つしかない。まさか恋人じゃないんだし一つのベッドに二人で、なんて事はないだろう。 かと言ってソファなんて物も無い。ということは…まさか… 私は奴を見た。奴はこっちを見ていた。こいつ、私の中で寝る気だ! -私にも拒否権があっても構わないはずだ。というか見返りをもらう資格があってもおかしく無いと思う。つーかよこせ。利用させてる私に感謝しろ。 しかしそのような声が届く訳無く、勝手に利用しやがった。この寄生虫が。 何か一悶着あった後、奴は私の中で熟睡しだしたが、小娘の方はベッドの中で震えていた。何かぶつぶつ言っているので近寄ってみる。 …詳しくは聞き取れなかったがどうやら何かあの役立たずに怒っているらしい。 しばらくすると小娘はそのまま寝てしまった。寝間着に着替えろよ、とつっこみつつ、私は床で寝る気になれないのでのそのそと動きだし、 小娘のベッドの上に載った。そこまで行くとまた睡魔が襲ってきたので、再度寝ることにした。 -別に私以外の誰かがどうなろうと知った事じゃあない。私は私の生活を営むだけだ。…ただ、感謝とかはされたいがな…。つかしろ。 うとうとしながら、そう考えた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2049.html
「・・・それじゃあ開けるわよ・・・」 揺らめく炎が微かに照らす岩壁に、少女の声が反響する。誰も近寄らない魔物の 巣窟、その深奥に安置された古びたチェストに手を掛けて、キュルケは真剣な 眼でルイズ達を見た。少し汚れた顔を皆一様に頷かせたことを確認して、 ゆっくりと蓋を開く。 キュルケの地図によれば、犬にされた王女の呪いを解除したとも、王に化けた トロールの魔法を見破ったとも伝わる「真実の鏡」がこの洞窟に隠されていると いう話だった。もし本当ならば世紀の大発見である。期待と不安の眼差しの中、 箱の中から姿を現したのは―― 「なッ・・・!」 粉々に割れた鏡の残骸だった。 「何よそれぇ~~~・・・」 糸が切れた人形のように、キュルケ達はへなへなとへたり込んだ。 「み、見事に割れちゃってますね・・・」 「・・・真贋以前の問題」 脱力するシエスタの横で、流石のタバサも疲労の溜息をついた。 「・・・戻るか」 頭を掻きながら呟くギアッチョに異を唱える者はいなかった。 その夜。 「はぁ~~~~~~・・・・・・」 適当に見繕った洞穴に腰を下ろして、ギーシュは深く息を吐き出した。 「七戦全敗とはね・・・」 焚き火に手を当てながら首を振る。 そう。現在消化した地図は八枚中七枚、そしてその全てが到底お宝等とは 呼べないガラクタのありかであった。 炎の黄金で作られた首飾りが隠されているはずの寺院にあったのは、真鍮で 出来た壊れかけのネックレス。小人が遺跡に隠したという財宝は、たった六枚の 銅貨だった。それでも何かが出てくるならばまだいい、中には地図に描かれた 場所自体が存在しないことすらあった。 「ま、いい経験が出来てよかったじゃあねーか」 ギアッチョが戦利品の欠けた耳飾りを眺めながら言う。彼の言ういい経験とは、 無論実戦経験のことである。この数日間否応無く化物の群れと戦い続け、 ルイズ達は最後にはギアッチョの助けが無くともそれらを殲滅出来る程に なっていた。 「おかげさまでね・・・」 「懐が暖まらないのは残念だけどね」 そう言いながらも、不思議とキュルケに悔しさは無い。そして、それは皆同感の ようだった。 ゆらゆらと揺れる炎を見つめながら、ルイズは静かに言う。 「でも・・・楽しかった」 「・・・そうだね」 その言葉に、皆の顔から笑みがこぼれる。傍から見れば何の得も無い、くたびれ 儲けのつまらない旅行だろう。しかし――損だとか得だとか、そんなことは彼女達 にはどうだっていいことだった。 眼に見えるものは何も無い、手に取れるものは何も無い。だが彼女達が手に入れた ものは、だからこそその胸の中で強く輝いている。 「・・・これ・・・」 ルイズは手のひらに慎ましく乗っている六枚の銅貨に眼を落とす。それは今回の 数少ない戦利品の一つだった。とは言え、とりたてて古銭というわけでもない 上どれも皆錆び放題に錆び、あちこちが傷つき欠けている。とりあえず持ち 帰ったはものの、どう考えても買い取り不可であろうこれをどうしたものか、 皆の頭を悩ませている一品であった。 「・・・・・・これ、皆で一枚ずつ持たない?」 しばし考えた後、ルイズはおずおずとそう言った。 「・・・分配?」 意味を量りかねて、タバサは小首をかしげる。 「ううん、そうじゃなくて・・・」 「こういうことだろう?」 そう言ったのはギーシュだった。ルイズの手から銅貨を一枚取り上げると、 錬金で中央に小さく穴を開ける。ガラクタの中からネックレスを取り出し、 穴に通して首にかけた。 「う、うん・・・」 ズレてはいるが殊更外見を気にするギーシュが躊躇い無く銅貨を見につけた ことに、ルイズは聊か驚きながら首を頷かせる。 「・・・解った」 得心した表情で立ち上がると、タバサもまたルイズの掌から銅貨を一つ掴む。 後に続いてキュルケが二枚をその手に取った。 「ほら、シエスタ」 「へっ?」 焚き火に鍋をかけていたシエスタは、キュルケに差し出された銅貨に眼を丸く する。一拍置いて、ブンブンと手を振ると慌てた口調で言葉を継いだ。 「そそ、そんないけません!折角の宝物を私のような平民に――きゃっ!」 キュルケはシエスタの額を中指で軽く弾いて言う。 「全く、まだそんなことを言ってるの?平民だとか貴族だとか言う前に、 私達は友達じゃない 大体、貴族と平民に違いなんて何も無いことは貴女が 一番よく知ってるでしょう?」 「・・・そ、それは・・・」 「ん?」 シエスタの瞳を覗き込んで、キュルケは優しく微笑む。シエスタは少しの間 銅貨を見つめて逡巡していたが、やがてキュルケと眼を合わせて口を開いた。 「・・・私でも――いいんでしょうか」 「よくない理由が無いわよ」 きっぱりと、キュルケは断言する。シエスタは少しはにかんだ笑みを浮かべて、 静かに銅貨を受け取った。 「ありがとうございます・・・ミス・ツェルプストー」 「き、君達いつの間にそんな関係にッ!?」 「どんな関係も無いから鼻血を拭きなさい」 何やら興奮した面持ちのギーシュを適当にあしらうと、キュルケはルイズに 視線を移して、 「ほら、まだ残ってるでしょうルイズ」 「・・・うん」 意味するところを察したらしいルイズは、掌に残った銅貨を一枚取り上げて、 ゆっくりとギアッチョに差し出した。 「受け取って、くれる・・・?」 「――・・・・・・」 ギアッチョは答えずに錆びてひしゃげた銅貨を見つめる。 これは児戯だ。心に風が吹けば飛び、薄れ、消えてしまう記憶を、それでも 留めておきたい子供の。 ――それでも。彼女達にとっては、この銅貨は紛れも無い宝物になるだろう。 ギアッチョは口を閉ざす。黙ったまま――その眼差しに万感を込めるルイズから、 銅貨を受け取った。 「ギアッチョ・・・」 ルイズの、キュルケ達の顔が綻んだ。どうにも居心地が悪くなって、 ギアッチョは銅貨に眼を戻す。薄くて軽いそれが、少しだけ重さを増した ように感じた。 「さ、皆さん お食事が出来ましたよ」 やがて完成したらしいシチューを、シエスタは鍋からよそってめいめいに配る。 食前の唱和もそこそこに、動き疲れたルイズ達は少々はしたなく食器に手を 伸ばした。 「・・・おいしい」 食べ慣れないが実に美味しいシエスタの料理に、ルイズ達は揃って舌鼓を打つ。 兎肉や種々のキノコにルイズ達が見たことも無いような山菜が入ったそれは、 聞けばシエスタの村の――正確には彼女の曽祖父の、郷土料理なのだと言う。 それから、話題はそれぞれの郷土のことに移った。少し酒の入ったギーシュは 饒舌にグラモン家の領土を語り、それを皮切りに皆わいわいと言葉を交わし 始める。ギアッチョも酒を傾けながら時折話に混ざっていたが、それを見て タバサがふと思い出したように呟いた。 「・・・貴方は?」 「あ?オレか?」 「そういえば、ギアッチョの話は聞いたけどそっちの世界の話は聞いて ないわね 良ければ聞かせて欲しいわ」 「・・・そうだな」 キュルケの言葉に、空になった杯を弄びながら答える。 「前にも言ったが、最も大きな違いは魔法なんてもんが存在しねーことだ」 「君のようなスタンド能力はあるのにかい?」 「こいつは例外中の例外だ スタンドを知ってる人間なんざ、さて世界に 何人いるかっつーところだな ・・・ま、そう考えるとよォォ~~~、 魔法使いがひっそり存在してるって可能性も否定は出来ねーが ともかく 殆ど全ての人間が魔法なんて知らねーし信じちゃあいねー そういう世界だ」 ギアッチョの説明に、キュルケ達は一様に不思議な表情を浮かべる。 「何度聞いても想像出来ないな・・・ ということはマジックアイテムも 無いんだろう?不便じゃないかね?」 「不便ってのは便利さを知って初めて出る言葉だと思うが・・・ま、別に んなこたぁねー 魔法の代わりに、地球の文明は科学によって発展してきた」 「・・・科学」 「あの教師――コルベールか?いつだったか、授業で簡単な内燃機関を 披露してたがよォーー、例えばあれを応用すると馬車より速い乗り物を 作れる 国にもよるが、大半の人間はそいつを足に使ってるな」 「えーっと・・・?」 案の定と言うべきか、今の説明を完璧に理解出来た者は居ないようだった。 眼鏡をかけ直す仕草の間に、ギアッチョは解りやすい例えを捻り出す。 「・・・簡単に言うとだ」 軽く居住まいを正すと、片手で天井を指しながら、 「あの飛行船・・・あれを動かしてる動力があるだろ」 「風石」 間を置かず補足するタバサに頷いて続ける。 「そいつを人工で作り出したみてーなもんだ」 おおっ、と全員が驚いた顔になる。 「凄いじゃない!魔法も使わずにそこまでのことが出来るなんて!」 得心がいって俄然興味が沸いたのか、キュルケが少し身を乗り出して言った。 いかにも非魔法的技術に特化したゲルマニアの貴族らしい反応である。 「あら・・・?ということは、コルベール先生は雛形とは言えそれを 一人で作り上げたということ?」 「そういうことだろうな」 油と薬品の臭気が漂う研究室で独り研究に明け暮れる奇矯な教師、という 学院一般の評判を思い出してギアッチョは答えた。「そう・・・」呟くように 言うと、キュルケは少し複雑そうな表情を見せる。 「それじゃ、他にはどんなものがあるの?」 続けて問い掛けるルイズに、ギアッチョは面倒というよりは怪訝な視線を 向けた。 「おめーにゃあ何度も話してるじゃあねーか」 「そうだけど、もっと詳しく聞きたいんだもの それに、皆は初めて聞く ことでしょ」 「ギアッチョさん、私ももっと聞きたいです」 ルイズとシエスタの言葉に、ギーシュが頷きで賛同の意を示す。ギアッチョは ガシガシと頭を掻いて、一つ溜息をついた。 「・・・ま、別にかまわねーが」 とは言え、乱暴な言い方をするならば殆ど何もかもが違うような世界である。 はて何から喋ったものかとギアッチョは一人思案した。 先端科学の話でもするかと考えたが、観測者の存在が観測結果に影響を与える 等と言ったところで理解は難しいだろう。考えた末に比較の可能な乗り物から 話すことにすると、ギアッチョは手近な小石で地面に絵を描き始めた。 「飛行機っつー代物があってな・・・」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/850.html
キュルケとタバサが急いで降りてくる。勝利を喜びあいたいところだが、今は そんな場合ではない。 「ルイズッ!!足見せなさい!!」 シルフィードから飛び降りるや否や駆け出してきたキュルケがルイズの足を とった。傷口を確認しようとして、思わず悲鳴を上げそうになる。 「――ッ!」 それはそうだ。骨が折れたとか肉がえぐれたとかいうレベルではない。 ルイズの左足首から先は、文字通りちぎれ飛んでいるのである。 よほど痛いのだろう、ルイズはギアッチョにしがみついたまま声も出さず 首を曲げることすらしない。しかし何が彼女を支えているのか、それでも ギリギリで意識は保っているらしい。 タバサがルイズの左足を持ってきた。それを元のように切断面に当て、 ギアッチョに支えるように指示し、タバサはそこからキュルケと共に水の 詠唱を始める。 「・・・治んのか?」 言ってしまってからギアッチョはルイズの前で聞くべきではなかったかと 少し後悔したが、キュルケは少し笑ってそれに答えた。 「大丈夫よ、まだ時間が経ってないからなんとかくっつくはず・・・ もっとも 私達は水のメイジじゃないから、あくまで応急手当しか出来ないけどね はやく学院に戻ってちゃんとした治療を受ける必要があるわ」 なるほどな、と呟いてギアッチョは腰を下ろす。支えてくれと言われても ルイズが未だにしがみついているのでかなり難しい。しかし今彼女が 戦っているであろう言語を絶する痛苦を考えると、少し離れろとか ましてどっちを向けだのどこに座れだの言えるはずがないので、 ギアッチョは仕方なく彼女を半ば抱き込むようにして足を支えた。 そんな自分の姿を見て、ギアッチョは自嘲気味に笑う。 ――このギアッチョがガキを抱えて何やってんだ?暗殺者から保父に転職ってか? しかし軽口を叩きながらも、自分が徐々にここに馴染みつつあることを ギアッチョは薄々自覚し始めていた。 ガサリ、という茂みを掻き分ける音が聞こえ、ギアッチョ達は一斉に振り向いた。 満身創痍でよろめきながら現れたギーシュはルイズを抱きかかえるギアッチョ という有り得ない光景に数秒言葉を失ったが、「遅かったじゃない」という キュルケの言葉に我に返ると、「ただいま」とだけ返事をして彼は糸が切れた かのようにその場に転がった。 ギーシュにこっちで起きたことをあらかた伝え終わる頃には、ルイズの 応急処置も終わっていた。 「動けるか?」 とギアッチョが聞くが、ルイズはふるふると首を横に振る。ギアッチョは やれやれと言うように息を吐き出すと、キュルケとタバサに眼を向けた。 「悪いが・・・オレ達も治療してくれねーか 力が余ってんならだがよォォ」 その言葉に頷いて、キュルケはギーシュの治療に取り掛かった。 「切り傷だらけじゃない」 彼女は驚いてギーシュを見る。そんなキュルケにギーシュは辛そうに笑い ながら答えた。 「正直泣きそうだよ 早いところなんとかしてくれたまえ」 「まだそんな軽口が叩けるなら問題ないわね」 フーケを倒し、ルイズの足もとりあえずの処置が済んだ今、キュルケは ようやく余裕を取り戻してきた。横目でギアッチョを見ると、タバサが治療を 施しているところだった。 本当に、この男は一体何者なんだろう。全身血だらけだというのに辛そうな 顔一つ見せないギアッチョを見ながらキュルケは思う。何が凄いとかどこが おかしいとか、そういう次元の問題ではない。ギアッチョの一挙手一投足、 その全てが常にキュルケの理解を超えていた。殺人に一切の躊躇を持たない こと、戦闘に慣れすぎていること、よく分からないことでキレまくること、そのくせ 普段は冷淡なまでに静かなこと、あと変な服とか変な眼鏡とか変な髪形とか、 そしてそれより何より彼の魔法――魔法としか思えない何か――・・・。 自分の火球を消し去ったと思えばギーシュの魔法を完全に跳ね返し、 あのフーケのゴーレムをも一撃で土に返す。こいつの能力は一体どこまで いけば底が見えるのだろうか。ギアッチョがその力を発揮するたびに、 彼女達は彼への評価を改めざるを得なかった。 ギアッチョはいつも同じ文句を唱えている。「ホワイト・アルバム」・・・発動に 必要な言葉はそれだけらしい。だがルイズがギアッチョを召喚した時、 あの男は一言も呪句を発さずルイズを凍らせていたはずだ。してみると あの言葉は発動の為のキーワードというよりは、己の精神を励起させる為の 合言葉と捉えたほうがいいのだろうか?そこまで考えて、キュルケはあとで 聞いてみるか、と思考に蓋をする。今はそれよりもっと気になっていることがあった。 「踏まれた時」 タバサがキュルケの疑問を代弁する。 「どうやって?」 治療を続けながら、タバサはその蒼い瞳だけをギアッチョに向けた。 要領を得ない質問だったが、ギアッチョはその意味するところを理解した。 だがこいつらにスタンドのことをバラしていいものだろうか。数秒の思案の 後、ギアッチョは当たり障りのないレベルで答えることにした。 「・・・あの木偶の足と地面との間に氷の支柱を作った 完全には間に合わ なかったんで御覧の通り地面にめり込んだ上に小石が刺さって血塗れ だが・・・薄切りハムみてーになっちまう前にギリギリ完成出来たってわけだ」 ギアッチョのタネ明かしに、その場を目撃していないギーシュまでもが眼を 丸くした。 「ギリギリって・・・飛び込んでから足が完全に地面につくまでの一瞬で そこまでやってのけたって言うの!?」 キュルケが思わず口を挟む。ギアッチョはこともなげな顔でキュルケに眼を 遣るが、内心自分でも驚いていた。 ホワイト・アルバム ジェントリー・ウィープス。膨大なスタンドパワーを消費 して、空気をも凍らせる力を引き出すホワイト・アルバム最大最強の能力。 しかしいくらなんでもあの0.5秒にも満たない時間で完全に足を固定し切れる とはギアッチョも思っていなかった。言わば捨て身の賭けだったのである。 そしてそれ以上に驚いたのがゴーレムの凍結粉砕だ。ジェントリー・ ウィープスを発動していることを計算に入れても、あれは速過ぎる氷結速度 だった。ギアッチョはデルフリンガーに眼を落とす。ビクッ、とその刀身が 震えた。相変わらず情けなく怯えているが、こいつを握った瞬間に加速した ことをギアッチョは思い返していた。思えば加速してからゴーレムをブチ砕く まで、自分はずっとこいつを握ったままだった。 ――こいつを抜くと力が強化されるってわけか・・・?身体能力だけでなく ・・・オレのスタンドまでも ギアッチョはじっとデルフリンガーを見つめると、おもむろに声をかけた。 「おいオンボロ」 「はヒィッ!!」 お・・・俺は何回殴られるんだ!?次はどこから襲ってくるんだ!?俺の そばに近寄るなァァーーー!!と叫びたかったデルフだったが、 「てめーがいなきゃあルイズは死んでた・・・助かったぜ」 「え」 ギアッチョの意外すぎる一言に、彼は口――のように見える鍔――を 開いて固まった。てっきりさっきとっさに彼に命令してしまったことを 怒られるのかと覚悟していたのに、ギアッチョの口から出てきたのは 正反対の言葉だったのである。ギアッチョはその妙な髪形の頭を掻いて 続けた。 「それとよォォ~~ その卑屈な口調はもうやめろ いい加減鬱陶しいぜ」 「・・・・・・ダンナ・・・」 敬語は使わなくていい、とギアッチョは言外に言っている。デルフリンガーは この暴君に自分が認められたことに気付き、 「・・・へへっ」 彼の口からは思わず笑みが漏れた。 ギアッチョの胸にかかっていた圧力がすっと無くなる。ルイズを見下ろすと、 彼女はギアッチョに押し付けていた顔を上げ、キュルケ達から見えないように ごしごしとこすっていた。ギアッチョはそこで初めてルイズが泣いていたことに 気付いたが、黙ってルイズが落ち着くのを待つことにする。 「・・・・・・・・・ギアッチョ・・・あの・・・・・・」 しばらくして少し気を取り戻したらしいルイズが、恐る恐るギアッチョを見る。 怒られるのを恐れているのだろうということは理解出来たが、ギアッチョは そんなルイズの心を忖度することなく、氷のような声で問いかけた。 「どうしてあんなことをした?」 その声にルイズの身体が一瞬こわばる。 「・・・それは・・・」 「オレが昨日言ったことを覚えてなかったと そういうわけか? え? おい おめーはこいつらの再三の制止を振り切って地上に残った そうだな そしてそのせいでフーケに逃亡を許しかけ・・・その上てめーの命まで 失うところだった それを踏まえてもう一度聞くぜ」 何故あんなことをした、とギアッチョは繰り返した。 ルイズは顔を俯かせ、しばらく沈黙を続けていたが、やがて絞り出すように 声を出した。 「・・・・・・だって・・・・・・ギアッチョが・・・」 「ああ?」 オレのせいかこのガキ、と怒鳴りかけたギアッチョだが、 「ギアッチョが・・・幻滅する・・・から」 その後に継がれた言葉を聞いて、彼の顔は「はぁ?」という形に固まった。 俯いていた為そんなギアッチョの顔を知らないルイズは、とうとう完全に 見放されたと思い込んだらしい。地面を見つめたまま肩を震わせている。 ギアッチョは心底困惑していた。すると何か?こいつはオレに見直して もらおうとしてこんなバカをやらかしたってわけか? ギアッチョは改めてルイズを見る。俯いていて表情は分からなかったが、 悄然と落としたその小さな肩は彼女の感情を如実に物語っていた。 ――どーしろってんだ 彼女が自分に相当な依存をしていたことに気付き、ギアッチョは心底 困惑した。生前――そして死んでからも――子供から好意を向けられた ことなど一度たりとてないギアッチョである。初めて向けられた、それも 殆どすがりつくような好意に彼が戸惑うのは当然のことだった。 ――こいつの様子がおかしいのはそういうことか・・・ およそプライドの高いルイズらしからぬ行動の理由がようやく解った ギアッチョだったが、 ――だからどーしろってんだ 結局目の前で死にそうに落ち込んでいるルイズに何と声をかければ いいのかは解らないわけで。万策尽きた彼は・・・もっとも策が一つとして 浮かばなかっただけなのだが、とりあえずこういうことに慣れていそうな ギーシュを見た。ボロボロの顔でにやにや笑いながらこっちを見ている。 よし、殺す。次にキュルケに目を向けた。実に楽しそうな眼でこっちを 見ている。てめーも覚えてろ。最後にタバサに眼を向ける。いつも通りの 読めない顔でこっちを見ていた。 ギアッチョはチッ、と大きく舌打ちをした。考えたって解らねーならとにかく いつも通りに喋るしかねーかと開き直る。失敗したらてめーをボコってやる という意思を込めてギーシュを一つ睨んでから、ギアッチョはルイズに向き 直った。 「顔を上げな 聞いてなかったみてーだからよォォー もう一度だけ言って やるぜ」 ルイズがゆっくりと上げた顔を覗き込みながら、ギアッチョは「いいか」と 前置きした。 「てめーに出来ることをしろ 勝ち目もない敵に無為無策で突っ込んで 行くのは『覚悟』でもなんでもねぇ・・・ただの自殺だ」 ギアッチョはルイズの宝石のような瞳を睨みながら続ける。 「ええ? 解るかルイズ 『覚悟』は道を作る意思だ・・・てめーの暴走は違う」 そこまで言って、ギアッチョは返事を求めるように言葉を切った。ルイズは ギアッチョの強いまなざしから逃げたい気持ちをなんとか抑えて、一言 「・・・はい」 と答えた。 ――何でオレはこんなガキに説教してんだ・・・? こういう役目はオレじゃあ ねーだろ ええ?おい ギアッチョは心の中で一人ごちると、小さく嘆息してから今一番彼女に必要な 言葉を口にする。 「・・・いいかルイズ 失敗なんてのはよォォ 誰にでもあるもんだ 重要なのは そこじゃあねー そこから成長出来るかどうかだ ええ? 違うか? てめーの失敗なんてオレは気にしちゃあいねーんだ ま・・・次同じようなことを やらかしゃあ今度はブン殴るがよォォ」 その言葉でルイズの瞳はまず驚愕に見開かれ、次に何かをこらえるように 細くなり――そして最後に、堰が決壊したように涙が溢れ出した。 ギアッチョはそんなルイズを呆れたような安心したような眼で見ると、オレの 仕事は終わりだと言わんばかりに立ち上がった。 ――我侭だったり素直だったりプライドが高いと思えばよく泣いたり・・・ 全くガキってのは解らねーな ギアッチョは新入りに兄貴と呼ばれていた仲間を思い起こし、改めてこんな キャラはオレじゃねえと強く思った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2321.html
沈みかける太陽をバックに何時ものようにシルフィードが進んでいる。 ただ、何時もと違うのは二人ほど余分に……元ギャングと現役盗賊が乗り込んでいる事である。 タバサは相変わらず本に視線を落とし、他二人はやる事も無いので……適当にしている。 しばらく何事も無かったが唐突にかつ盛大に『ぐぎゅるぅぅぅぅ』という音がした。 「……予想は付くが、一応聞いてやる。こいつは何の音だ」 地の底の亡者の声もとやかくというか、今居る下の方から聞こえてきたのだ。九割九分あの音だろう。 「おねえさま、おにいさま、シルフィはおなかがすいたのね。きゅいきゅい!」 予想的中。シルフィードの腹の虫が盛大に抗議声明文を発表したようだ。 なおも喚きたてるシルフィードにようやくタバサが本から目を少しだけ離すと あらかじめ用意してあったのか、なにやら妙な形の塊をシルフィード口目掛け放り投げた。 シルイフィードがパクリとそれを飲み込むと全身が揺れる。 「ッ!……っぶねぇな。落とされんのはゴメンだぜ、オレはよ」 ヴェネツィア超特急ですら本来なら致命傷のはずだったのに ここから落とされれば、怪しい中国人に言われなくともまず間違いなく死亡確認である。 無論、そんな事知らないシルフィードは気にせず騒いでいるのだが。 「お肉かと思ったのに騙されたぁ~~~!偽物なのね!紛い物なのね!おねえさま酷いのね!」 べっ!と口の中からモノを前足で器用に取り出すと本を読んでいるタバサの前に突き出す。 しかしながら、御主人から帰ってきた言葉は淡々かつ簡潔なものだった。 「食べられる」 「でも、まずいのね!おいしいわけがないの!お肉の味はするけど、お肉じゃない!偽物なのね!」 「それって確か、最近出回ってる魔法で肉の味を付けたっていうやつじゃあなかったっけ」 「……マジでなんでもあんな」 モノを見てフーケがそう言ったが、魔法が生活面にそこまで直結してる事に本気で呆れてきた。 「やっぱり偽物だったのね!おねえさまもおにいさまも食べてみれば分かるのね!」 ……それはひょっとしてギャグで言ってるのか? 一応、さっきまでシルフィードの口の中に入っていたモノであり つまりは、結構ッ!そのモノはシルフィードの涎でベトベトだァ!なわけで美味い不味い以前の問題である。 「おい……オメー食ってみろ」 「……わ…わたしが…?……か…い…今まで、こいつの口の中に入ってモノを?絶対にイヤ!おにいさまが食べてやりゃあいいじゃあないか!」 「オレだって嫌に決まってるだろーが」 そうキッパリと言い放つが相変わらずだ。 「さっきもそうだったけど自分が嫌なものを人にやらせるなッ!どおーゆー性格してんのさあんたはッ!」 泣きそうなフーケと平然としたプロシュートを背景に、タバサがモノを少し千切って食べた。 「食べられる」 それでも淡々としたタバサに抗議を続けているが、なしのつぶて、ぬかに釘、のれんに袖押し、という具合に全く手応えが無いようだ。 「食べる、食べられないとかいう問題じゃなくて シルフィは美食家なのね!主人は使い魔の食べ物に責任を持つべし。使い魔として当然の権利を要求するのね!」 そのやり取りを見て、どーもどっかで知ったような情報だと思ったが、ブチャラティチームの略歴とスタンド情報を見ていた時だと気付いた。 確か、ミスタのピストルズが飯食わさないと働かないとかいう記述があったはずだ。 特に戦闘に直結しない事項だったので、さして気にも留めなかったのだが、今頃思い出した。 「む!おねえさま。風韻竜はあそこに街を発見 尖塔とか寺院とかあってなかなか素敵な街なのね。という事は、素敵な街には素敵な名物があるのが常識なのね~~」 「時間とお金が無い」 不味くなけりゃあ特に何でもいいプロシュートとてイタリア人である。 イタリアと言えばご存知イタ飯で有名な土地であり美味い物など、それこそ星の数ほどあるのだ。 だからまぁ、シルフィードの言わんとする事も分からんでもないし、相応の仕事をさせるには相応の対価が必要だという事は何より自分が一番知っている。 「ピストルズかオメーは。だがまぁ、連中みてーに途中で働かなくなるってのもオレが困る。食った分はキッチリ働けよ」 「きゅい!?さすがおにいさまなのね!そこの本の虫娘とは大違いなの。シルフィおにいさまの使い魔になりたかったのね!」 「あまり甘やかすと後で色々と困る」 そうタバサが言ってきたが、当のプロシュートは涼しい顔で返した。 「……アメと鞭って言葉知ってるか?」 (こいつ、一体どんな無茶な事させるつもりだろう……) アメと鞭。言い換えるなら貸しがシルフィードに出来たという事で一体何倍にして返すハメになるだろうかと理解したフーケが少し同情した。 まぁ自分も同じような状況にあるのだが。 もっとも、悲しい事に今のところアメは無く鞭のみで負債を返し続けているような状況だ。 あっれあれー?それってもしかして今のわたしって韻竜といっても畜生以下の扱い? おっかしいなぁ……なんだか目から水が出てきたや。ハハハハ…… ますますダークサイドへ突っ走っしっているが、今ならばどこかで犬と呼ばれている少年と一発で仲良くなれるだろう。 なにせ、今のところ報酬は『取られるはずの自分の年』であり、他は何も無い。 一度ならず二度までも攻撃を仕掛けたというツケの代償が高く付いた結果なので残念な事に中途解約もできないのである。 魔法学院に盗みに入った結果がこれだよ!!! まんじゅうのようなナマモノがそう叫んだような気がしたが、たぶんいつもの幻聴だ。 もういっその事『ヘヴン状態!』とでも叫びながら現実から逃げたくなってきたのだが、そんな事をやらかせば間違いなく周りから『少し可哀想な人』という称号を頂いてしまうし、まだそこまで堕ちたくはないのだ。 それに短い間だが、一つだけ確実に分かった事があった。 こいつは全体的に他の人間を、特に年下を自分より下に見る傾向がある。 見下すとかそういうのではなく、ただ単に実力や精神的覚悟が足りてねーと思っている節が見てとれる。 こういう奴と対等な立場になるには一つしかない。 実戦やらで実力を認めさせるか、タイマン張って互角以上の勝負をするとかそういうやつだ。 後、一度敵と判断すれば誰であろうとものスゴク容赦ない。おまけにドSだ。それも自覚が無いという一番性質の悪いやつの。 その割りに、案外甘いというか面倒見が良いところがあるから分からないもんである。 まぁそれが元敵である自分に一片の欠片も向けられていない事に、この先精神的に無事にアルビオンまで戻れるかとメチャ不安ではあるのだが。 「おい、なに縮こまってやがる」 上の方から聞こえてくるやたら高圧的な声がしたが、どうやら無意識のうちに膝を折り曲げ顔を埋めた、いわゆる体育座りのポージングになっていたらしい。 その声にギギギと錆付いた機械のような音が鳴らんばかりにゆっくりと首を上に向け口を開いた。 「……一体誰のおかけでこうなってると思ってるのさ」 「少なくともオレじゃねーな」 やっぱ自覚無しかこいつ……半分死んだ目でプロシュートを見たが、恐らく文句を言ったところで『てめーの自業自得だろボケ』で済まされてしまう。 そう確実!オスマンがセクハラをするぐらい確実! そんな分かりきった事に労力を使うぐらいならまだ言わない方が遥かにマシだ。少なくとも現状より状況が悪くなる事は無い。 ……きっと。 最高と最悪という言葉があるが、この二つはかなり違う。 フーケ自身、最高にはある程度上限はあるが、最悪という状況に際限は無いという結論に達していた。 というのも、ほんの半年前までは『土くれのフーケ』としてハルケギニア中の貴族から恐れられていた大盗賊だったのである。 それがこいつに捕まった上に二目と見れないような姿にされ、ワルドに半強制的にレコン・キスタへ入れられ、挙句またこいつに捕まった。某連邦の外部組織のエリート中尉も真っ青な転落っぷりだ。 クロムウェルの事があるから一応自主的に協力する事にはなったが、もう少し待遇というか扱いを良くしてもらいたい。元敵とはいえせめて人並みに……。 また少し丸まっていると、後ろから首根っこを掴まれブン投げられた。 「へ……?いや、ちょっとここ竜の上……」 やっぱり始末する気か。いやこいつの事だから『オメーら空飛べるんだから問題ねーだろ』ぐらいにしか思ってないのか。 メイジだって急にこんな事されれば対応できないんだぞー。このドグサレがァァァァァァァ!! と0.5秒の間にそんな走馬灯めいた事を一気に考えたが、予想より遥かに早く、そして柔らかい衝撃を受けて落下が止まった。 「呆けてねーで早く降りろ」 その言葉に辺りを見回したが、どうやらシルフィードはとっくに地面に降りていたらしい。 「……だからって投げることないじゃないか」 「草の上なだけマシだろーが。それとも土くれだけあって堅い地面のが好みか?」 「そりゃどうもありがとよ」 消耗しない…こいつはこういう奴なんだからマチルダお姉さんはこの程度で消耗しない……。 この程度の事で消耗していたら、そのうち何も無いのに定期的に血反吐とか吐く羽目になる。 中の自分にそう言い聞かせながら、少々力なく立ち上がり身体に付いた草を払っていると後ろから呪文が聞こえてきた。 『我を纏いし風よ。我の姿を変えよ』 例によってシルフィードの周りを青いつむじ風がまとわりつくとその姿を人間へと変えた。 「それが先住魔法ってやつか。さすがのわたしも生で見るのは初めてだね」 「この際だから説明するけど、わたし達は先住なんて呼び方はしないのね。精霊の力をちょっと借りてるだけなんだから」 そう説明しながら相変わらずすっぱだか状態でふらふらしているシルフィードを見て一つ気付いた。 「……って事は、あんたのも精霊とかの力を借りてるって事?」 となれば、さし当たって生命を操る水の精霊あたりかと検討を付けたが、もちろん違う。 「どっちかっつーと、オレ自身から力を引っ張り出してるっつった方がいいな。兎に角、別モンだ」 「あんなえげつない能力持った理由が今分かったよ」 理屈は分からないが、こいつの性格なら生物を無差別に老化させるような洒落にならない能力が付いても不思議ないととりあえず納得しておく。 「オメーらも頭にあの矢でもブッ刺せばスタンドが出るかもしれねーな」 まぁ別に頭でなくてもいいが、サバスが掴んで刺してきた印象が強いのだからそう言ったが、聞いた方は何やら誤解を強めたようだ。 「……頭に……矢……?」 ああ、そーか。人間じゃないのかこいつ。そりゃあ、あんな妙な能力持ってるわけだ。 やっぱり正真正銘の悪魔だ。人の皮を被った悪魔っていうし。 「聞こえてんぞ、てめー」 そりゃあ悪魔とかの類じゃなけりゃあ人を老化させるような能力が……聞こえてぇ!? どーやら、衝撃というか驚きが大きすぎて頭の中だけにおさまらずに声に出ていたらしく、一気に血の気が引いてフーケの顔が思いっきり青くなった。 「……い、一応聞くけど、どの辺りから?」 「人間じゃねぇとかその辺りだ」 ok。完璧に弁解の余地無し。思いっきり最初から聞かれていたようである。 そこで問題だ! このゴイスーなデンジャーが迫っているマチルダはどうやってこのピンチを切り抜けるか? 答え①-美人怪盗フーケは突如スクウェアクラスに進化する 答え②-そこのタバサかシルフィードが助けてくれる 答え③-老化する、現実は非情である わたしがマルをつけたいのは答え②だが期待は出来ない… 本にしか興味なさそーなタバサと食べ物の事にしか興味ないようなアホ竜は正直なところ助けになりそうにない…… となれば①を選びたいが何かの弾みでスクウェアになったとしても、こいつの力に敵うとは思えない…… で、一方のプロシュートの方は、さすがに人外扱いされるのも何なので『これでも、まだ人間だ』と言おうとしたが、全員そうだったから気にしないでいただけで、普通ならそれだけで死ぬなと思い直し、一応説明はする事にした。 「……あー悪ぃ。矢ってのは、こっちで言うマジックアイテムみたいなもんだ。っておい」 フーケの様子が何やらおかしい。目を明後日の方向に向け同じ事をブツブツと言っている。 「答え③、答え③、答え③……」 答え③と古くなったテープレコーダーのように小さく繰り返す姿を見たが、アルビオンに行ってもいないのに、まだこんな所で壊れてもらっては困る。 めんどくさそーに息を吐くと懐からある物を取り出し、それをフーケの顔の横まで持っていくと街外れの森に大きな音が響いた。 「~~~~○XX▲▽○ッ!?」 耳を押さえながら理解不能な言葉をわめいているが、鼓膜まで破れていないから大丈夫だろう。 たぶん。 「目ぇ覚めたか」 「……いつつ……雷が横に落ちた気分だ。というかなんでそんなモン持ってるのさ」 手に持ってる『銃』を見てそう言ったが答えは至極簡単だ。 「そりゃあギったからな」 それでフーケも理解した。銃士隊の装備だこれ。銃身にトリステインの紋章入ってるし。 盗られた方は今頃大慌てというやつだろうが、知ったこっちゃあない。例によって盗られた方が間抜けなのである。 「ま……弾も火薬もねーし、第一込め方なんて知らねぇから、今撃ったやつで最後だがよ」 「じゃあ、あんな事で撃つ事ないじゃないか」 一発しか撃てない以上もっともだが、それは撃つ方がただの平民とかである場合だ。この場合根底から使い方が異なる。 「分からねーか?」 「?」 分かっていないようなので、そのまま銃口を額に突きつける。まぁつまりそういう事だ。 「見えねースタンドと、見える銃。脅しに使うならどっちがいいか分かんだろ?」 わたしからすればどっちも変わらない。てか、まだ誰か脅す気かお前。と言いたげだが スタンドの事を知らないヤツからすれば銃の方に注意がいく。 武器として使う気はあまり無いが、牽制か脅しとして割り切れば十分利用価値はあるとしてアニエスから拝借してきたのだ。もちろん無断で。 後、新式だけあって売れば金になる。 「んで、矢ってのは普通の矢じゃあねーぞ。そいつを刺すとスタンド、オレが持ってるような能力が身に付く」 それを聞いた瞬間久々にフーケの目が光った。 こいつの言う『スタンド』とやらが刺すだけに手に入る、いわば魔法の矢。売るにしろ使うにしろ土くれとしては聞き逃せるものではない。 しばらくアレやらコレやらと考え少々顔がニヤけていたのか、横の方から呆れ半分の声で突っ込みが入ってきた。 「なに考えてるか大体想像付くが……死ぬかスタンド能力が付くかだからな。万が一見つけて使うってんなら遺書ぐらい残しとけよ」 「つまり?」 「矢に選ばれなかったヤツってのは確実に死ぬんだとよ。オレもあん時の事はあまり思い出したくねーな」 パッショーネ恒例の入団試験だが、見えないサバスに掴まれて矢を思いっきり刺されるのである。さすがに回想したいものではないわけだ。 「はぁ……そんなロクでもないモンよく使う気になったって感心するよ」 「知っててやったわけじゃあねー」 ライターの火を消して再点火するとポルポのスタンドが発動するなど、知らなければ今でも再点火しそうなのにスタンドの事すら知らなかった、まして入団が掛かっていた当時の場合はどうするかなぞ推して知るべしかなというところだ。 大体、あのド畜生が自殺したなどとは今でも信じられない。 名前が示すとおり、自分の手足喰ってでも生き残るようなヤツだと思っていたのだが。 あの面と体でナイーブとかふざけた事ぬかすなら、恐竜の絶滅原因は神経衰弱かPTSDだ。 そんな事を考えていると、後ろから急かすようなわめき声がしてくる。 「そんな事どうでもいいから、早くご飯を食べに行くのね!」 いつの間にやら服を着たシルフィードに腕を思いっきり引っ張られた。 一方のタバサはというと、座って本を読んでいる。 正直、見た目の年齢と精神年齢が全く逆である。 だがまぁ確かにあるかどうかすら知れない矢の事なぞどうでもいい事だ。 もちろん、メイジ兼スタンド使いなんぞが量産されては洒落にもならないから無い方がいいのだが。 とにかく、さっさと飯食ってクソくだらねー任務終わらせる方が先だ。よくよく考えたら戦闘の後始末やらで飯食ってない。 片手で回していた銃を懐に仕舞うと、まだ座り込んでいるフーケを片手で引っ張り上げた。 「お前らの方が詳しそうだからな。内容は任せる。………オメーはいつまでも本読んでんじゃあねーよ」 その言葉にきゅいきゅいと頷くシルフィードを見てタバサもやっとこさ本を閉じて立ち上がったが臨時北花壇チーム、現在四名。 その内訳、常時強気な元ギャング。食べ物に目が無く、この前ご主人に『脳が足りてないとまで言わないけど近い』と言われた伝説の韻竜 苦労人属性と不幸属性が付きはじめてきた現役盗賊、本ばかり読んでいて何考えてるんだかよく分からない正規隊員。 内容だけ見ると暗殺チームにも負けないぐらい個性的な面子揃いだが、プロシュートからすれば冗談じゃねー。という面子である。 暗殺チームの時はリゾットが仕切っていてくれていたからまだ良かったが こと戦闘以外に関しては他の連中があの具合なので自分で仕切らねばならないのだ。 戦闘になればそれぞれそれなりの実力があるんだから楽でいいんだが、まぁ全部順調に進めば苦労なんぞ起きないだろう。 にしても、あん時のミスタの拳銃捨てんじゃあなかったな。とかマジに思っているときゅいきゅいと声が聞こえてきた。 「ここね!このお店がこの街で一番良い匂いがするのね!」 その声で顔を上げたがシルフィードが一軒の酒場を指差している。 色々考えてるうちに街の中まで入っていたらしい。 シルフィードを先頭にして残りも店の中に入っていったが 「ボロいな」 「ボロいね」 「ボロい」 ものの見事に三人揃えて同じ感想を叩き出した。 実際、木でできた粗末なテーブルと奥にカウンターがあるぐらいでボロいと言われても仕方が無いが言われた方はたまったもんではない。 口を揃えてボロいと酷評してきた三人を見て太った中年の店主が思いっきり眉をひそめた。 「旦那、うちの店が上品な店じゃないって事ぐらいは知ってますがね。冷やかしなら別の店行ってくださいや」 「悪りーな、口が悪いのは生まれつきだからよ。客だ」 口だけじゃなくて性格も悪いだろーが。と後ろの方で一人そう思ったが決して口には出さない。だってそれが世渡りというものだと思うから。 まだ機嫌悪そうな店主だったが、タバサの杖と五芒星を見て一気に態度を変えた。 「貴族のお客様ですかい。これはボロいと言われても仕方ありませんや。お付の方も空いてる席におかけください」 というより、他三人をタバサの付き人か何かと判断したようである。 お付と言われて少々サバイバーな気分になったが、ここで騒ぎを起こしても一文にもなりゃあしないし 確かに貴族でもメイジでもなんでもありゃあしないのだからそう見られても仕方ない。価値観の違いとして処理する事にした。 フーケもメイジだがタバサみたいにデカい杖じゃあないのでお付扱いだが気にしていないらしい。 店主が料理を運んでくると、まずシルフィードがガッつき始めた。 タバサもそれに続いたが、早い。なんでこんなに喰うやつがこんなに小さいのか。 こいつでこの小ささならポルポはもっとデケーぞ。と思わざるを得ない。 「食ってるとこ悪いんだが本題だ。そのタマゴってのはどういう場所にあるんだ?」 料理いう名の要塞から早々に撤退し酒の攻略を開始したプロシュートがそう質問したが期待した答えは返ってこない。 「ほふはくひょうほはまほは、はひゅうはんはふ。ひはふふははんひはふほへ」 「食うか喋るかどっちかにしろよてめー」 「……………」 と、シルフィードが料理を優先させたためである。タバサも似たようなもので次々と料理を始末していっている。 フーケの方も己を失わない程度に酒を飲んでいるため、まぁ折角の休息だという事でもう少し時間を置くことにした。 「で、場所は」 「極楽鳥のタマゴは、火竜山脈。いわゆる火山にあるのね」 ワインの瓶を三本空けた頃ようやく料理攻略作戦が一段落付いたので再度質問したが、厄介な場所だという事が理解できた。 「そりゃあ、無理だな」 「おにいさまの言うとおりなのね。おねえさまは竜族の恐ろしさが分かってないの」 「こいつじゃあ、んな場所に行きたくねーわ。ったく……代わり探さねーとな」 「きゅい?代わりって他に誰かいるのね?」 「誰?服の事に決まってんだろーが」 そう言った瞬間、シルフィードが盛大に顔をまだ残っている料理の中へと突っ込んだ。 だが、そのまま何か食っているので大丈夫だろう。 「確か極楽鳥の巣って火竜の巣にも近いんじゃあなかったけか」 そのフーケの問いにタバサが頷くが、その横のシルフィードはいつの間にか空になった皿に顔を埋め泣きそうな声で文句を垂れている。 「あまり行きたくねーがな。火山ならオレの得意戦場だ。射程外から攻撃されない限りどうでもなるだろ」 「きゅい!あの力を使うのね?」 四本目のワインのコルクをスタンドで捻り取り瓶のまま飲みつつそう言うと、シルフィードが少々汚れた顔を上げたが、まだ途中だ。 「ただし、オメーらも巻き添え食って死んでもいいっつーんならな」 火山帯というからには外気温は相当なはずだ。恐らく氷で体を冷やす間もなく即死確定である。 「もう、おにいさまったらシルフィ達も巻き込むなんて冗談が過ぎるのね」 シルフィードは笑って流したが、横のフーケは気が気ではない。 (本気の眼だ………!) さっきまで体の中に入っていたアルコールはどこへブッ飛んだのやら一気に冷や汗が背中を伝う。 こいつ、場所を火竜山脈に限定すれば弱点が無い。 なにせ歩いているだけで半径200メイルの生物は全て枯れ木のように朽ち果て死に絶える危険物へと成り果てるのである。 放っておけばハルケギニアから火竜が居なくなる可能性の方が高いし、そんな爆弾の横に居るのは御免被りたい。 その対照的な二人を余所に今まで黙っていたタバサが口を開いた。 「その作戦は使えない」 「理由は何だ?」 「目的はあくまでタマゴ。タマゴまで壊したら意味が無い」 どういう事かと少し考えたが、答えを見つけて指を鳴らした。 「オレの能力、ザ・グレイトフル・デッドは無差別に生物を老化させる。動物だろーが、植物だろーが……例え卵だろーが、って事か」 「そう」 タバサは短く答えたが、プロシュートからすれば予想外である。 まぁ、卵なぞ進んで老化させようとした事もないしやろうと思った事もない。巻き込んだとしても気に留めた事すらないからだ。 殻に覆われた卵とて中身は不完全ながら生物である。老化する可能性の方が高い。 「確かにな。ブツを見つけてもそいつが化石になってたんじゃあ洒落にもならねぇ」 少なくとも極楽鳥の巣付近での能力発動は限定されるという事だ。 直で対処するか離れたとこまで敵を引っ張るしかなくなり、予測難易度が一気に跳ね上がった。 たまには能力全開でやらせて欲しいものだが、どうやら始祖ブリミルというのはスタンド使いには優しくないらしい。 もっとも、それを言うならローマの世界三大宗教の内の一つである神様も彼ら暗殺チームには優しくはなかったのだが。 「気付いたか?」 「そりゃあね」 突如プロシュートが小声でフーケに話しかける。 何に気付いたかというと、こちらへの視線である。 一瞬、フーケに感付いた賞金稼ぎかなにかと思ったが、視線の質が明らかに違う。 視線の元を辿ると、隅の方で一人座っていた老婆が思いっきりこっちを見ていた。 「……絶対目ぇ合わすんじゃあねーぞ」 「いぇっさー」 軽い返事だがフーケも目を合わせるとロクな事にならない事ぐらい理解できる。 色んな人間を見てきた二人だから分かるが、あれは『自分の力ではどうしようもなくなり他人にすがるしかない』という人間の目である。 目を合わせた瞬間形振り構わず厄介事を持ち込んでくる、ある意味捨て身の人種だ。 正直、こういうヤツが一番怖い。保身を考えずに動く人間は怖い物知らずだから、この場合相手が誰だろーとダメ元で頼み込むに違いない。 早急に撤退するべく勘定を済ませるべく店主を呼ぼうとしたが、何も知らないというか能天気なシルフィードが明るい声で言った。 「そこのお婆さん、さっきからこっち見てどうしたのね?お腹がすいてるのなら一緒に食べるのね。きゅい」 その声に反応したのか、老婆がよろよろとこっちのテーブルに近づいてくると、タバサの足元にひざまづいた。 「違います、違います、わたしは物乞いではありませんのじゃ。騎士様をこれと見込んで、お頼みしたい事がありますのじゃ」 もうスデに直触りを食らったような姿で泣きながら訴える老婆だったが、大人二人からすれば老婆の姿をした厄病神に他ならない。 「クソ……ッ!言わんこっちゃあねー」 「ごめん!……ってわたしのせいじゃあない!」 小声とアイコンタクトでそんな会話をする二人をよそに老婆がなおも泣きながら足元で泣いている。 そうしていると、店の奥から店主が出てきて、老婆の肩を掴んだ。 「商売の邪魔だ!余所でやってくれ!」 ベネ。そのまま摘み出せ。という期待を抱いていたが、そこに割り込むようにしてタバサの長い杖が入ってきた。 「騎士様?」 「かまわない」 タバサがそう言った瞬間、プロシュートもこの事に関しては諦めた。 事実上の移動手段はシルフィードのみであり、移動の決定権はタバサにあるためだ。 物なら最悪『ころしてでも うばいとる』が可能だが、シルフィードは生物であり高度な知能を持っている。 少しだけベイビィ・フェイスの息子の教育に苦労しているメローネの気持ちが分かったかもしれない。 「ったく……厄日だ」 そんな呟きを無視してタバサが老婆を促すと事の顛末を涙声で話し始めた。 「ミノタウロスねぇ」 「牛の化けモンだったけか?大昔だが、オレんとこもいたらしいな」 東地中海にある小さな島。クレタ島のミノタウロスの迷宮と言えば有名どころだ。 とにかく話を纏めると、十年ぐらい前にもミノタウロスが住み着いたが、その時は今と同じように旅の騎士に頼んで退治して貰った。 今回は領主に訴えたが、この界隈で子供の誘拐事件が流行っているらしく エズレ村の事に構っている暇が無いようで十年前と同じように頼みまわっている……という事だ。 頼むほうはいいだろうが、頼まれた方からすれば厄介事以外の何物でもない。 第一、最良の解決策がある。 「んなもん、逃げりゃあいいだろーが。話聞く限り何もねーとこだろ?化けモン以前に村捨てた方が身のためってもんだ」 超現実的な意見にタバサと老婆を除いた全員が同意するかのように首を縦に振っている。 その様子に絶望したのか、遂に老婆が泣き始めた。 「あの罰当たりな怪物は、最初の生贄にわたしの孫娘のジジを選んだのでございます……」 搾り出すようにそう言うとさらに大きな声で泣き始めた。 切れ切れにミノタウロスがわざわざ指名してきたからには村を捨てても狙われると言っているようで、村を捨てる気は無いようだ。 にしても、よくもまぁ直食らったような体でこれだけ泣けるモンだと感心したが、そう感心してばかりもいられない。 第一、こっちにも用がある以上は構ってられない。 何考えてるか知らないが、そのぐらいタバサも理解しているはずだと思ったが、どうも今日は予想が裏目裏目に出る日らしい。 唐突にタバサが立ち上がると「どこ?」と呟くと老婆を促し歩き出したからだ。 もちろん、シルフィードはきゅいきゅいとわめいて止めようとしているが、一度決断したタバサは断念する気配は無い。 「お、おねえさま!ダメなのね!風使いには危険な相手なのね!ああ、もう!二人とも説得して欲しいのね」 「なっちまったモンは仕方ねー」 「きゅい!?」 「わたしに決定権は無いから無理だね」 「きゅいきゅい!?」 完全に諦めたのか、金を机の上に置くとプロシュートとフーケも同時に席を立ち上がっている。 「どうせ修行とでも考えてるんだろうが……その、何だ。ミノ……モンタだったか?」 「タウロス」 一瞬『奥さん!』と声高らかに叫ぶミノタウロスの姿がその場に現れたが気のせいだ。 「ああ、ミノタウロスってのは火竜より強いのか?」 「それは……火竜のブレスはミノタウロスも一瞬で灰にするぐらいの威力があるのね」 「ってぇ事はだ。牛程度に手間取るようじゃあ火竜山脈なんぞの攻略は無理ってこった」 「まぁそうだね。諦めなよ」 まだ不安なのか色々言いたそうだったが、プロシュートが一つ提案を出してきた。 「少なくとも、オメーらが危なくなったらどうにかしてやるよ。この際だ、条件としてそうなったら先にアルビオンに飛んでもらうぜ」 無差別老化という能力の持ち主と、土のエキスパートであり三十メイル級のゴーレムを造りだせるフーケ。 この二人がいれば、少なくとも命はなんとかなる。そう思いシルフィードもタバサを追いエズレ村に向かい始めた。 臨時北花壇ご一行――本人の知らない所でタバサだけで倒せるか倒せないかのミノタウロス討伐賭けゲーム発生。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2588.html
反省する使い魔! 第十三話「土の略奪●雷鳴の起動」 「ねぇタバサ、あなたはどう思う?」 「………?」 食事を終え、ルイズに付き添って医務室にいるキュルケとタバサ。 メイジの女医師に音石からもらった金を支払い、 治療をしてもらっているルイズの後ろで キュルケがタバサの耳元で、ルイズに聞こえないように呟いた。 「……何が?」 「オトイシの『アレ』の事よ」 『アレ』とは言うまでもなく 『レッド・ホット・チリ・ペッパー』のことである。 「彼の能力のこと?」 「そうよ、あたりまえでしょ? あららァ~、それともなにィ?もしかして変の意味で考えちゃったァ~?」 「………あなたと一緒にしないでほしい」 「ふふっ、それもそうね。そう睨まないで頂戴 それで、どう思う?」 「………どう、とは?」 「なんでもいいのよ、いろいろと疑問はあるでしょ? いくつか聞かせてくれるだけでいいの、 わたしも考えたんだけどさァ~、 いろいろと疑問が多すぎて逆にサッパリなのよ」 ある意味キュルケらしいとタバサは思った。 次にタバサの口から小さくやれやれと溜め息が出る、 なんでもかんでも自分に意見を求めるのはキュルケの悪い癖だ。 でもそれはそれでキュルケらしいと、妙に納得もいった。 そしてそんな親友キュルケの為に、頭の中で疑問点をまとめる。 「彼は……ただの平民じゃない」 「そりゃそうよ、あんな強い亜人を操れる彼が 『ただ』の平民だったら、私たちメイジの立場がないわ! あ……でも、それならあの亜人は一体何なのかしら? やっぱり、あのギターって楽器がマジックアイテムになってるのかしら?」 「………たぶん、ちがう」 「どうしてそう言い切れるの?」 「正直言うとこれは勘。でも少しだけ思い当たるところはある。 以前彼自身もマジックアイテムを使っていると言っていた でもあれはたぶん嘘、態度があまりにも素っ気無かったし それに彼が『能力の正体がマジックアイテムを使っている』と すんなり答えたところがとてもひっかかる」 「…確かに、彼の性格から考えてそんなに自分の能力の秘密を すんなり他人に教えるなんて奇妙で不気味ね…… でもじゃあそれって………」 キュルケが顎に手をあてて考える仕草をとる。 そしてそんなキュルケの考えを予想できたタバサは 彼女のために結論を口にした。 「あれは……マジックアイテムとも……魔法ともまるで違う わたしたちの常識を遥かに超越したナニか」 「……もしかして、未知の先住魔法とか?」 「それも考えにくい、彼はエルフには見えないし そもそもあの亜人には、魔力の流れを感じなかった」 「そう…よね…、ギーシュとの決闘のときは 距離があったからわからなかったけど、 昨日の戦いでは彼と彼の亜人のすぐ傍に私いたけど そんな感じ全然しなかったわ………」 なにやら更なる疑問が増えてしまった気がして、 キュルケは両手でわしゃわしゃと頭を掻き回した。 「あァーーもうッ!わっかんないわねぇ!! 一体彼って何者なのよ!!」 「病室では静かに!!」 (まったく、仮にも貴族がなにやってんだか…) 後ろで突然叫んだことで、医務室の専属メイジに 元気よく怒鳴り怒られたキュルケにルイズは胸の中で溜め息をついた。 【ガチャリ】「失礼します」 するとキュルケたちのさらに後ろで、 医務室の扉が開く音と同じくしてモンモランシーが入ってきた。 「あら、モンモランシーじゃないの 一体どうしたのよ?熱でもあるの?」 「はァ?な、なんでそうなるのよ?」 キュルケの挨拶に続いた質問にモンモランシーは首を傾げた。 しかしキュルケは別に皮肉で言っているわけじゃない。 本当にモンモランシーを心配して質問したのだ。 なぜなら………、 「だって…あなた顔すっごい赤いわよ?」 「え、ええぇッ!!?」 モンモランシーはすぐさま両側の頬っぺたに手を当てた。 ………熱い、とても熱い。熱と勘違いされて当然の熱さ。 原因はわかってる、わかってはいるけど…… まさかここまで自分は顔を紅くしているとは思わなかった。 そんな自分の顔をルイズたちがまっすぐ見ている。 実際は純粋にクラスメイトを心配している視線なのだが、 モンモランシーはそんな視線をとても直視できなかった。 「ちょ、ちょっと!ひ、ひ、人の顔をまじまじ見ないでよ!?」 くるり、っとモンモランシーは顔を隠すために体ごと後ろを向いた。 しかしそこに最高のタイミングで…………、 【ガチャリッ】「よー、ルイズいるかァ?」 「キャアアアアアアアアァァァァァッ!!!??」 「おわァッ!!?」【ビックゥッ】 原因である男、音石明が入ってきた。 モンモランシーの壮大な絶叫が鳴り響く。 当然この後、医務室専属メイジに 「病室では静かにッ!!!」 とキュルケと同じように怒鳴られたのは言うまでもない。 まあこの医務室専属メイジ自身もけっこう大概のような気もするが……… 「てめぇ一体どういうつもりだァ? 俺が日頃大音量に慣れてるギタリストじゃなかったら 今頃耳の鼓膜がブチ破れてるぜ!」 「あ、あなたがいきなり現れるからいけないんでしょう!?」 「てめぇの頭は間抜けかァ? ついさっきまで一緒にここまで来たんだから当たり前だろーが!!」 また怒鳴られないために結構セーブした声で音石がモンモランシーに抗議する。 ついでに言うとこの医務室は貴族専門で、 給仕以外の平民は立ち入り禁止されている。 その証拠として、医務室専属メイジに怒鳴られた後 「ここは平民の立ち入りは禁止よ!」と睨まれたが ルイズの計らいのおかげで、 今は問題なく医務室内でモンモランシーに講義できている。 そんなドアの前の二人のやり取りに、キュルケとルイズは意外そうな顔をした。 毎度のコトながら、そんなキュルケとルイズに対して タバサはいつものように本を読んでおり、 モンモランシーの絶叫の際も一切動じなかった。 「あの二人、いつの間にあんなに仲良くなったのかしら?」 キュルケの口から当たり前の疑問がこぼれた。 まあ無理もない、はたから見れば実に奇妙な光景だ、 外見的にも十分奇妙。 顔に古傷を持ち、学院の女子生徒にも引きを取らない長髪の男。 ロールヘアーと大きなリボンとロール頭が特徴的な少女。 絵になってるようでなってないような組み合わせだ。 当然外見だけじゃない、その人間関係的にも実に奇妙。 方や不思議な能力を使い、この学院の生徒一人を半殺しにし、 生徒たちの間でお尋ね者扱いされているなぞが多い男。 方やその半殺しにされた生徒の恋人関係にあった香水の少女。 『奇妙』、実にシンプルにひと言である。 そんなひと言が、この二人にはとてもよく似合っていた。 「で?ふたりして一体何しに来たのよ? しかもオトイシ!なんであんたがモンモランシーと一緒にいんのよ!?」 「治療してもらったばっかなんだろルイズ? 傷が治ってすぐにそうカッカすんなよ、気分がダルくなるぞ?」 (誰のせいだと思って………!!) ルイズが心の中ではき捨てた。 彼女からしてみれば、自分の使い魔が よその女の子(しかもクラスメイト)と仲良くしているのは あまりいい気分ではない。 普段こういう感情の対象はキュルケだと相場が決まっているが、 とうの本人は奇妙な事に音石に対して そういうアプローチは今のところ一切していない。 おそらく二日前、音石がキュルケの部屋から出てきたあのとき 自分の知らないなにかがあったのだろう…… 少なからず、キュルケを人間的に変えるなにかが……。 「でもまあ勘違いすんなよルイズ おれはお前らが医務室にいると思って様子見に来たんだよ でも肝心の医務室の場所がわかんなかったんだが そこをこいつが親切に案内してくれたっつ~なりゆきよ~」 「そういうことよ、変な勘違いしないでよね まったく、これだから『ゼロ』のルイズは……」 「だれが『ゼロ』よ!!」 「たくっ、お前ら二人そろってカッカしてんじゃねぇ! また怒鳴られちまうだろうがッ!! まったく、ルイズの性格考えて、変な勘違いして怒らねぇように わざわざわかりやすく簡潔に説明してやったってのによぉーー、 これじゃ無駄骨もいいとこだぜ……… モンモランシー!頼むからルイズをしょうもねぇことで 怒らせんのはやめてくれ、ルイズが怒りのまま爆発起こして その後片付けっつー二次被害受けんのは俺なんだぞ!? ルイズもルイズだぜぇ~?いちいち相手の挑発にのるようじゃ 周りが見えなくなって、おまえ自身が一番損する羽目になるぜぇ?」 「「…………………う~~…」」 ルイズとモンモランシーは小さな唸り声をあげる。 (普段の俺ならこういううっとおしい状況はとりあえずギター響かせて 押し黙らせるんだが……、まあ場所が場所だしな… てゆーかよ~、他人に説教すること自体俺らしくもねぇな 他人に説教できるほど立派な人間ってわけでもねぇぞ俺) いろいろと呆れた仕草を音石は髪を掻くことで表した。 「そうよ、よく考えてみればこんなことしてる場合じゃないわ! え~~とっ【ガチャリッ】……………あれ?」 モンモランシーがルイズたちを通り過ぎると、 医務室に設置されてあるいくつかの扉のうち、 手前から二番目の扉を開いた。しかしその扉の先には、 窓から太陽の光に照らされた高級そうなベッドや 棚などの家具が置いてあるだけで そのベッドにもその部屋にもだれもいなかった。 (さすが貴族の学校の医務室だぜ この医務室だけでもこんなに豪華な個室が設置されているとは。 個室ひとつひとつがまるで高級ホテルの宿泊部屋だぜ、 なんだってたかが医務室にこんな無駄な作りするかねぇ~~~) 音石がその無駄に豪華な医療用個室にも呆れるが モンモランシーはなぜか少し混乱していた。 しかし、モンモランシーのその混乱の正体を察した 医療室専属メイジがモンモランシーを助けた。 「ああ、ミスタ・グラモンなら一番奥の部屋ですよ」 「え?ですが前はここに………」 「なんでも『奥のほうが静かで落ち着く』だそうです それで今日の朝、部屋を移したんです」 「あ…、そういうことですか。ありがとうございます」 トテトテとした足どりでモンモランシーは 医務室の一番奥の扉に向かっていった。 こう見ると扉まで意外に距離があった。 音石がそんなモンモランシーを眺めていると モンモランシーはそのまま扉をノックし、個室の中へと入っていった。 するとルイズが急に音石の上着の袖を引っ張ってきた。 「なんだよ?」 「はいこれ、言われたとおり残りは返すわ」 手渡されたのは彼がルイズに託した金貨が入った袋だった。 音石が中身を確認すると、まだある程度の量は残っていた。 「はっ、意外だな」 「…なにがよ?」 「自分でもわかってるくせに聞くなよ、俺を試してんのかァ?」 使い魔の責任は主人の責任、主人の責任は使い魔の責任。 これがメイジと使い魔の間での鉄則だ。 音石が言う意外とは、 『使い魔のものは主人のもの』という理由で ルイズが金を没収してこなかったことに対してだ。 「フフフッ、でもルイズの気持ちなんとなくわかるわ、 わたしだって仮にオトイシが使い魔だったら同じことしそうだもの」 「どういうこった?」 「あなたがそれだけ『特別』だってことよ 使い魔らしくないって言ったほうが正しいかしら?」 「あー…、なるほどな」 音石が袋を懐に仕舞う。 『特別』―――――――、たしかに音石は『特別』だろう。 使い魔らしくないというのもそのまま的を射ている。 サモン・サーヴァントで前例のない召喚された人間。 『忠実』とまで主人に従わない使い魔らしくない使い魔。 不思議で奇妙な『特別』な能力・スタンドを扱う人間。 その上、そんなスタンド使いのなかでも あの『弓と矢』を手にしていた『特別』なスタンド使い。 ここまで特別だとかえって清々しいものだ。 その特別のおかげで、ルイズは本来の使い魔の扱い方を 特別な音石に同等に扱うのが滑稽に感じているから すんなりと金を返してくれたのだ。 (ん?まてよ………) 袋を懐に仕舞い終え、上着から手を出したときに 音石はあることに気がついた。 医務室専属メイジが口にしたとある名前だ。 「ミスタ・グラモン?おいおいおい、 それって俺が決闘で半殺しにしてやった小僧のことか? あの野郎、あれからだいぶ経ったのにまだ治ってねぇのかよ どれどれぇ、おれも様子を見に行ってみるか」 「あ、ちょっとオトイシッ!?」 急に奥へと向かっていった音石に ルイズは驚いて声をかけたが、 音石はそれを無視しモンモランシーの後を追った。 (ふっふっふっ、ベッドで安心して寝ているところに 寝かした理由の張本人が突然現れたら…………… ギヒヒッ、あいつ慌てふとめくぜ!) 早い話タチの悪い嫌がらせである。 22にもなるいい歳した大人なのに どうもこういう子供じみた嫌がらせをするのは どちらかというと音石本来の性格の悪さにあるのだろう。 【ガチャリ】「おらァ、入るぜ」 ノックもせず、モンモランシーが入っていった個室のドアを開ける。 部屋の構造は最初の個室と大して変わらず、 中央の壁際にベッドが置いてあり、窓がひとつ、 ドアの近くに花瓶がのった小さな机と椅子。床にしかれた絨毯。 どれもこれもが気品溢れる豪華な代物だった。 そしてその豪華なベッドの上で横になっている ギーシュが入ってきた音石を見た瞬間 顔を蒼白にし、全身がガタガタ震え始めた。 そしてその音石もギーシュが自分に完全に恐怖する様を見て 気分がいいのか、悪どい笑みを浮かべはじめる。 「ようクソガキ、思ったより元気そうじゃねぇか さすが魔法だな。あれだけぐちゃぐちゃにしてやったってのに たった数日でほとんど治ってるじゃねーかァ。ええおい?」 「き…き、き、き、君は!? な、な、なぜ!?き、き、きみがここにィ!!?」 ギーシュの体は魔法の治癒のおかげで音石の予想以上に回復していた。 半殺しにされた当初こそは、バイクで事故って間もない墳上裕也を 余裕で上回る包帯やギブスなどでの施されようだっただろうが 数日経った今となっては片手と片足を包帯でぶら下げているだけの この世界の治癒の魔法の凄さを思い知らされる傷の治りようである。 「ちょ、ちょっとオトイシさん!? 一体なんのつもり、きゃあっ!?」 モンモランシーが二人の間に割って出ようとしたが 音石がすかさずモンモランシーの腕につかみかかり 彼女を自分の傍に引き寄せ、彼女の耳元で話しかけた。 「べつになんもしやしねぇよモンモランシー ちょっとばかしからかってやるだけさ」 普段のモンモランシーならそれでも止めに入るだろうが 今の彼女の状況が彼女をそうさせないでいた。 その状況というのが………、 (か、顔が!……あわわ、か、か、顔が近い……) そう、モンモランシーの耳元で呟く必要があったため 二人の顔の距離が必要以上に接近しているのである。 それこそ、鼻息の生温かさまで感じ取れる程の ウェザー・リポートといい勝負であった。 しかもモンモランシーは異性にここまで顔を近づかれた経験など ギーシュのときですらなかったため、 モンモランシーの顔にどんどん赤みがかかっていく。 【ボォンッ!】 そしてとうとうその赤みが限界値に達したのか モンモランシーの頭の上で小さな噴火が起こり、 次に湯気が立ち昇り、彼女はそのまま硬直してしまった。 立ったまま赤面で硬直してしまったモンモランシーを通り過ぎ 音石はさらにギーシュのベッドに接近した。 「ぼ、ぼ、僕をどうするつもりだッ!?」 ギーシュはこのとき、 自分をこんな目に合わせた元凶に対する恐怖のせいで その元凶に対するモンモランシーの態度の異変に気付かないでいた。 まあその元凶本人もモンモランシーの態度に気付いちゃいないが…… 「さてなァ…、どうすると思うよ?」 ギーシュの恐怖からくる冷や汗と心臓の鼓動が増す、 普通なら平民が貴族に対して手を出すことは絶対的なタブーだ。 今だってそうだ、互いの承諾の元で行われる決闘とはワケが違う。 だが目の前の男は…………『例外』すぎる!! 平民でありながら自分を凌駕したチカラを使い、 平民でありながら自分をここまでボコボコにした例外者である。 (ま、まさか……こんな大怪我で動けない僕を さらにボコボコにする気かァーーッ!!?) ギーシュはあわてて枕元においてある 自分の杖の薔薇に手を伸ばした。 しかし虚しいことに、その伸ばした手は薔薇を掴むことはなかった。 なぜなら薔薇を掴む寸前に、音石に横取りされてしまったからである。 「おいおい、物騒なことすんなよなァ~~ ここは医療室だぜ?静かにしねぇと駄目じゃねぇか 俺みたいに、ここ担当してるメイジの女に怒られちまうぜ?」 希望が奪われたことにギーシュは泣きそうになった。 いや、これから泣かされるのだろう。 できればその程度であることを願った。 「へ、平民の君が貴族である僕に手を出したらどうなるか わかっているのか!?決闘のときは運良く問題にならなかったが 今回はそうはいかないぞ!?君がどれぐらい強くても 世界中のメイジが君を追い、間違いなく処刑するぞッ!?」 ギーシュの混乱した様を眺めながら 音石は内心でおおいに爆笑していた。 ギャハはァーーッ!なにもしねぇってのにバカが吠えてやがるぜ!! 音石からしてみればギーシュのその姿は滑稽でしかなかった。 包帯で手足を固定されているためベッドから動くことができず 頼みの綱であった杖も手元になく、ただ自分に威嚇するその姿、 動物園の檻の中で観客に威嚇する小動物、まさにそれである。 音石はそのまま、ギーシュの虚しい威嚇を眺めていると ある人物が部屋に入ってきた――――――。 「ちょっとオトイシ!やめときなさいよ さすがにギーシュに悪いわよ!」 治癒のおかげで完全に回復したルイズである。 音石は首だけ後ろに向け、それを確認する。 そのルイズに反応して硬直していたモンモランシーも 別の意味で帰ってきたようだ。 まあ、ルイズがそういうならここらあたりで勘弁してやるか 音石は満足そうに息を吐き、ギーシュから背を向けようとした しかしまさにその時だった。ギーシュが言葉を発したのは…… 「お、おいゼロのルイズ!! はやくこの使い魔をなんとかしてくれ!! 主人なら使い魔の管理ぐらいちゃんと【グイッ!】ひ、ひィッ!!?」 言葉の途中に音石は瞬発的にギーシュの胸倉を掴みかかった! そしてそのまま手足の包帯での固定もお構いなしに ギーシュを無理やり力尽くで自分のほうへと引き寄せた。 「おいテメェ……、マジで入院期間先延ばししてやろうか……?」 「う、……うう、…うああ…あ………」 とうとうギーシュの目から涙が溢れる。 その音石の行動にすぐさまルイズとモンモランシーが止めに入った。 「なにやってるのよオトイシ!?いくらなんでもやりすぎよッ!?」 「そ、そうよオトイシさん!さっきなにもしないって言ってたでしょう!?」 「てめぇらは黙ってろッ!!!」 【ビクゥッ!!】 音石の怒鳴り声にその部屋にいた全員がびびった! そこには先程までの年下の小僧に嫌がらせをする大人気ない姿ではなく、 なにか怒りに触れた悪鬼の如き、威圧ある姿があった。 「う、う………ゆ、許してくれ……」 涙で顔を濡らしたギーシュから謝罪の言葉が出る。 しかしその言葉は音石の怒りにさらに触れるだけだった。 「決闘の時もそんなこと言ってたなァ~~~~、ええおい? お前は謝ることしかできねぇのか?よぉ、どうなんだ小僧?」 「う………うう…それ以外なにをすれば……… お、お金が……う、う……ほしいんなら幾らでも払う……だ、だから……」 「このボケがァッ!! 金で治まるよーな問題なら俺もここまでマジになりゃしねぇよッ!! 俺が頭にきてんのはな~、てめぇがやるべきことに気付いていねぇことだッ!!」 胸倉を掴んでいた手を離し、ギーシュをベットに叩きつけた。 ギーシュは喉を押さえて咳き込みながら、 音石を恐る恐る見上げ、そして呟いた。 「やるべき……こと………?」 「……………………………」 音石は何も言わず黙り込んでいる。 聞かずとも自分で考えろ。そう示しているのだろう。 そしてギーシュは考える…………。 一体自分のなにが悪かったのだろう? 二股をしていたこと事態はあくまで自分の個人的な問題に過ぎない。 ならばその罪を無関係な給仕になすりつけたことだろうか? いや、近い気もするが一番の理由はそうではないような気もする。 考え方を客観的にしてみよう………、 一番重要なのは『目の前の男が何に対して反応した』かだ………。 ・ ・ ・ ・ ・ 『ゼロのルイズ』!! ギーシュは一気に理解した! 目の前の男はルイズを侮辱したことに怒りを表しているのだ! だが何故だ?使い魔としての本能がそうさせているのか? それとも彼の元からの性格がただのお人よしなのか? いいや、そんなものはどうでもいい!問題はそこではない!! 一番の問題は、自分がルイズを今まで侮辱し続けたことにある! 自分の誇り高き家柄、グラモン家の教訓はなんだ? 薔薇である女性を守る棘であることだろう!? それなのに自分は今まで彼女になにをしてきた!? 魔法が使えないから!?確かに彼女は魔法は使えない、 だがそれでも魔法が使えるようにと必死で努力している 事実彼女は筆記試験では常にトップだ。 ……………だからこそ尚更なのかもしれない。 魔法が使えない故に実技では常にルイズはゼロ点だ。 それに対して筆記試験では常にルイズはマン点だ。 それがものすごく気に入らなかったんだ………、 ゼロに嫉妬している自分に苛立ちを覚えてしまっていたのだ。 自分だけじゃない、ほとんどのクラスメイトがきっとそうだ。 だからみんなルイズを罵倒したのだ、見下していたのだ、 侮辱していたのだ、『ゼロのルイズ』と……………。 刹那、個室の外の廊下から足音が聞こえてきた。 このタイミングでやってくるような人物は大体予想できる。 扉が開かれる、予想通り医務室専属のメイジの女性だ。 「一体なんの騒ぎですか!?」 「え……あッ!?い、いえ!これは………その…事情がッ……」 ルイズは焦った、自分の使い魔がまた同じ生徒相手に しかも重症の状態で暴行を働こうとしたなどと 学院側に知られたら今度こそ退学になる恐れがあったからだ。 なんとか誤魔化そうとルイズが必死で思考を廻らせる。 「……いいえ、なんでもありませんよ」 ルイズは自分の耳に届いた声を疑った、 何を隠そう、その声は間違いなくギーシュの声だったのだ。 「お騒がせしてすみません 急に窓から虫が入ってきたので、つい慌ててしまって……」 「む、虫ですか?」 「ご心配なく、もう追い払いましたので…… 本当に申し訳ない、ご迷惑をお掛けしてしまい……」 それならいいんですが……、と言い残し そのメイジの女性は扉を閉め、部屋を後にしていった。 足音が遠退いていくにつれ静寂が部屋を支配する。 しかしその静寂のなか、ギーシュは深く息を吸い、目を閉じた。 そして静かに吸った息を吐き捨てると、開いた彼の目はルイズを見た。 「な、なによ……?」 「ルイズ……………すまなかった……」 「………え?」 足が動けないせいで ベットの上で横になっている状態の体を精一杯前に傾け ギーシュはルイズに向けて頭を下ろした。 「僕は、いままで君に酷い事をしてきた…… だが今更僕がなにを言ったところで、言い訳にしか感じないだろう いままで君に対しての侮辱してきたのは事実なんだからね…… だが一言、これだけは言わせて欲しい………、本当にすまなかった」 「ギーシュ………」 モンモランシーから彼の名が零れた………。 ルイズ自身もどこか複雑な表情を浮かべながら、 何を言うべきか考えているといったところだろう。 (ここまでくりゃあ、後はこいつら自身の問題だな せいぜい達者にやんな、時間はたっぷりあるんだからよ) 自慢の長髪をなびかせながら、音石は静かにその個室を後にした。 医務室を出る途中にキュルケたちに何があったのか質問されたが、 音石は「でけぇお邪魔虫が部屋を出て行ったんだよ」とだけ述べ 扉を開き、そして閉め、医務室を後にしていくのだった…………。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/606.html
ギーシュは薔薇の杖でギアッチョを指して言う。 「何も知らない平民のためにあらかじめ言っておいてやろう」 何が何でも言葉でイニシアチブを取りたいようだ。聞かれてもいないのに ギーシュはべらべらと自分の力を喋る。 「僕の二つ名は『青銅』 青銅のギーシュだ 従って――君の相手はこいつが する・・・行けッワルキューレ!」 ギーシュが造花の薔薇を一振りするとその花弁が一枚宙を舞い、 ズォオォオッ!! 青銅の甲冑に姿を変じた。ギーシュはキザったらしい仕草で杖を下ろすと、 眼の前の平民がいかに驚くかを観賞しようとギアッチョを見るが、 「おもしれーもんだな」 と呟くギアッチョの表情には何の変化も起こらなかった。 「・・・ッ、平民が・・・!余裕ぶっていられるのも今のうちさ!ワルキューレッ!!」 自慢のワルキューレを前にして何ら取り乱さないギアッチョに、ギーシュは もういいとばかりにワルキューレを襲い掛からせた。 猛然とこちらに向かってくるワルキューレを見据えて、しかしギアッチョは 眉一つ動かさない。 ――ホワイト・アルバムを身に纏い、そのまま奴まで歩いていって直に発動 させる・・・オレがその気になりゃあ30秒もかからねーが、それじゃつまらねぇ こいつは「恐怖」と「屈辱」を存分に与えた上で殺すッ!! などとギーシュをいたぶる戦略を練っていると、 「ギ、ギアッチョさん!!逃げてくださいっ!!」 動かないギアッチョにシエスタが叫ぶ。しかし時既に遅し、ワルキューレはもう ギアッチョの懐に潜り込んでいた。そしてその右手がギアッチョの腹に―― スッ ドガシャアア!! 当たることはなかった。ギアッチョは引きつけたワルキューレから最小限の 動きで身をかわし、青銅の騎士はその勢いのまま地面に突っ込んだ! 「てめーの自慢の魔法はよォォーー この程度なのか?え?マンモーニ」 ギアッチョはギーシュに向き直ると、感情のないままの眼で彼を見る。 「一度攻撃を避けただけで何を得意になっているんだい?」 しかしギーシュもその程度で焦りはしない。自分のワルキューレはまだ何体も いるのだ。ギーシュは薔薇を振って更に2体のワルキューレを呼び出した。 二体の騎士は土を蹴ってギアッチョに向かって突進し、そっちにギアッチョが 気を取られている隙に、さっき倒れた一匹目がギアッチョの足に飛び掛って 引きずり倒す!・・・はずだった。しかしワルキューレが彼の左足を捕らえる 瞬間その足はスッと持ち上げられ、一体目はまたも惨めに大地へ倒れた。 続く二体目の突進を一体目をまたぐステップでかわし、その後をついて 走ってきた三体目は折り重なって倒れる先の二体にぶつかって動きを止めた。 オォォォ、とギャラリーにどよめきが走る。 「どーやらよォォ~~~ もったいぶった外見してやがるが・・・単に遠隔操作 出来るだけのスットロいデク人形だったみてーだなぁあぁ メローネの ベイビィ・フェイスの足元にもおよばねーぜ」 合間にギーシュを侮辱することも忘れない。とはいえ、普通の人間なら一体目の 一撃を腹に受けて一瞬でくたばっているはずだ。ギアッチョがそれを回避出来た 理由は、彼が幾百の修羅場を潜り抜けて来たからに他ならない。スタンドなど なくても、ギアッチョにはワルキューレの一挙手一投足が予測出来ていたのである。 ギーシュにはギアッチョが何を言っているのかよく分からなかったが、自慢の 騎士達をデク人形呼ばわりされたことだけは理解出来た。 「・・・少し素早いからと言って調子に乗らないでもらいたいね平民!!ここまで 頑張ったことは褒めてあげよう だがこれで終わりだッ!!」 いくら避けられるからといって魔法に平民が勝てる道理などないのだ。・・・と、 ギーシュはそう思っている。その自信から出た勝利宣言であった。 「漫画みてーな陳腐なセリフ吐いてる暇があんならよォォ~~・・・とっとと次の 手を披露してみろよ マンモーニよォォーー」 「まだ言うかッ!!行けッワルキューレ達!!」 ギーシュが造花の杖を、一回、二回、と振り下ろす。薔薇の花弁はそれに 合わせてひらひらと舞い落ち、彼の造花から全ての花弁がなくなると同時に、 更に四体のワルキューレが姿を現した。四体のワルキューレ達は主人を 守りつつギアッチョを囲い込むように布陣し、その間にいつのまにか 起き上がってきた最初の三体がギアッチョの後方を固めた。 「ああっ・・・囲まれた!!」 「ギアッチョぉ!!隙が空いてるうちに逃げ出せッ!!」 たまらず叫んだのはシエスタとマルトーである。しかしギアッチョは今度も動く 気配を見せず、代わりに首だけをひょいと彼女達に向けると、 「心配は無用だぜ それよりよォォーー ちゃんと見てろよマルトー! シエスタ! おめーも眼をそむけんじゃあねーぜ」 と言い放った。ギーシュは「遺言なら今のうちに言っておくことだね」などと喚いて いるが、全く意にも解さない。自分などここにいないかのように振舞うギアッチョに ギーシュの怒りはとうとう頂点に達した。 「もうッ・・・もういいッ・・・!!貴族を侮蔑したことを悔やみ・・・絶望に身をよじり ながら死んでいけッ!!!」 その言葉を合図に、全方位に布陣したワルキューレ達は一斉にギアッチョに 襲いかかり、シエスタ達の悲鳴をバックコーラスにその剣を振り下ろ―― 「ホワイト・アルバムッ!!」 ギアッチョがその名を叫んだ瞬間、全ては動きを止めた。ギャラリー達は―― ルイズやキュルケですら――目の前の異常な事態に声も出せなかった。 ギーシュは半ば状況を理解したのか、口をぱくぱくとさせているが――これも また声になっていない。 ギアッチョを取り囲んでいたワルキューレ達は、ギアッチョが何かの名前を 呼んだ瞬間、青銅と氷の彫刻と化して動きを止めた。そして輪になった オブジェ達の凍った頭部を、「何かに包まれた」ギアッチョの右腕が、一体、 また一体と粉砕してゆく。誰もが無言のままオブジェの破壊は続き、頭部を 失った哀れな人形達がまるで花を開くように外側に倒れていくのを破壊者は 色をなくした眼で見下ろし。ワルキューレだったものを踏み越えて、男が花の 外側へゆっくりと姿を現した時、 ギャラリーはパニックに陥った。 泣き叫ぶ者、もんどりうって逃げ出す者、呆然とその場に立ち尽くす者。彼らの 悲鳴と足音でヴェストリの広場は一瞬にして阿鼻叫喚の様相を呈した。無理も ない、男がやってのけたのは一瞬にして八体もの物体の動きを完全に停止 させるほどの氷結である。おまけに停止させたのはただの物体ではない。 「青銅」のゴーレムが「殺す気で」剣を振り下ろしているのである。それを 一瞬で完全に停止させて男は平然とギーシュを睨んでいるのである。彼らが 恐慌に陥るのも無理からぬことであった。 「あの男が・・・これをやったっていうの・・・?」 愕然としてギアッチョを見るキュルケだが、ふとルイズに眼を向けると、 「あいつ・・・こんな物凄い力を持ってたの・・・!?」 彼女もまた衝撃を受けていた。今朝の部屋ごと冷却事件の時点で気付くべき だったかもしれないが、とにかくルイズは今改めてとんでもない男を召喚して しまったと思った。常に無表情なタバサもこれには驚きを隠し切れないらしく、 わずかに眼を見開いていた。 「バカな・・・・・・ただの平民のくせに・・・・・・そんな・・・嘘だ・・・・・・」 ギーシュはうわごとのように否定を繰り返している。そんなギーシュに今の ギアッチョの関心は微塵も向いていなかった。 「青銅ってよォォ~~ 「青い」銅って書くんだが・・・実際の青銅は 大体緑色してんだよォォォーーーー なんで緑銅じゃあねーんだァァオイ!! ナメやがってこの言葉ァ超イラつくぜェ~~!!クソッ!クソッ!コケに してんのかッ!!ボケがッ!!」 またしてもよく分からないことを喚きながらワルキューレの残骸を踏み つけている。ギーシュはそれを見ながらぶつぶつと何か呟き続けていたが、 次第に我を取り戻すと自分はまだ負けてはいないということに気付いた。 花弁の無くなった杖を構えると、ギアッチョを睨んで叫ぶ。 「いつまで遊んでいるんだ平民ッ!!勝負はまだ全然ついちゃあいない!!」 そうとも貴族が平民に負けるわけがない!長年の間に染み付いた選民意識は そう簡単には変わらない。ギーシュはまだまだ勝てると思っていた。 「僕の魔法がワルキューレだけなんて思わないで欲しいね!!」 そう言い放つがいなやギーシュは呪文を唱え出した。 「くらえッ!石礫をーーッ!!」 言うがはやいか、ギーシュのかざした杖の先に出現した大量の石塊が ギアッチョめがけて降り注いだ! 「チッ・・・!」 ギアッチョは走って身をかわそうとするが、広範囲に撃ち出された石の雨は とても避けきれるものではない。石の一つがギアッチョの左足に直撃したッ! 「ぐッ!!」 石に片足をつぶされ、ギアッチョは思わず膝をついた。そんなギアッチョを 見下ろしてギーシュは今度こそ確信した。 「ハハハハハハハッ!どうだッ!!これが僕の力さ!!平民如きが偉そうに してくれたが・・・今度は僕の番だッ!!体中を穴だらけにしてやr」 「あーあー ちょっといいかギーシュさんよ 靴の紐が解けちまったみてーで よ・・・ 今から結ぶんで少々待っちゃあくんねーか」 もはや走ることも出来ないというのに、ギーシュの口上をさえぎってギアッチョは のんきに靴をいじりだした。 「こッ・・・この男・・・!!あの世で詫びろ!!喰らえ石礫ーーーッ!!」 キレたギーシュは石礫を跪くギアッチョ目掛けて発射し、 「全くよォォ~~ バカとハサミは使いようってやつだよなァアァ」 その瞬間ギアッチョは薄く笑って後方に飛びのいた! バガガガガッ!! ギアッチョを狙っていた石礫はその全てが地面に命中し、その衝撃で辺りは 土煙に包まれる! 「何ィィィーーーーッ!?奴はこれを狙っていたっていうのか!?な、何も見え ないッ!!」 土煙はギアッチョの姿を完全に覆い隠した。ギーシュはギアッチョのいた 場所から距離をとると、石礫をいつでも発射できるように呪文を唱えて杖を 構える。そして彼が呪文を唱え終る辺りで、 「さぁ姿を見せろ・・・お前は走れない、この一撃で終わりだ・・・ッ!!」 徐々に煙は薄れ・・・そして、ギアッチョが姿を現した!! ギアッチョは先ほどまでと殆ど変わらない場所に立っている。 ――何かをするつもりか・・・!? とギーシュは考えたが、 「しかしこっちのほうが早いッ!!」 ギアッチョが動く前に速攻で石礫を撃ち出した!!石礫は目にも留まらぬ 速さでギアッチョに飛来し、そして命中―― ギュインッ!! 「・・・何の・・・音だぁぁ~~!?」 ギアッチョは変わらずそこに立っている。そして何かの音だけが不吉に響きだした! ギアッチョはギーシュにだけ聞える声で答える。 「この煙がいい・・・おかげでギャラリーに姿を曝すことなく・・・一瞬だけ発動できた・・・」 バヂッ!!ギュイン ギュイン!! 「な・・・何の事だ・・・ッ!?」 ギュイン!!ギィンッ!! 「ジェントリー・ウィープスッ!スタンドパワーは使うがよォォ~~ いい感じに固定出来たぜ・・・」 ギィンッ!!ギュインッ!! 「だ・・・だから何の事なんだッ!!」 ギュイィンッ!!ギィィン!! 「眼をこらすんだな・・・てめーには見えないか?止まった空気が 見えないか!?よく見ろよッ!!」 バッギィィイーーーーーンッ!!! 「バッ・・・バカな・・・」 ドスドスドスドスドスドスドスッ!!! 「ガフッ!!」 飛来した無数の石の弾丸は、ギアッチョの周りに作られた凍った空気の壁に 遮られ、ギーシュ自身の元へと跳ね返ったッ!! 「反射魔法・・・!?ねぇルイズ!あいつ一体何者なのよッ!!」 キュルケはルイズに問い詰めるが、 「そんなこと私だって知りたいわよ!!」 ルイズにも答えることは出来なかった。ギアッチョのいた世界やその境遇などは 一通り聞いたが、ギアッチョの使っている能力については、「スタンド」という 名前であるということしか教えられていなかった。ルイズにも彼の力の正体は 分からなかったのである。冷静に戦況を見ていたタバサでさえ、ギアッチョの 「反射魔法」の正体は分からなかったのである。 「どんな感じだァ?てめーの魔法でやられる気分ってのーはよォォ~~」 ギアッチョは無慈悲にギーシュを見下ろしていた。ギーシュの全身には 血まみれの穴が穿たれているが、彼はまだかろうじて意識を保っていた。 しかしギアッチョは容赦をしない。おもむろにギーシュの首をつかむと、 グイッ!と持ち上げた。 「オレはてめーに言ったよなァアァーー・・・ 殺される『覚悟』は出来てんのか ってよォォォ え?どうなんだオイ『覚悟』は出来てんだろーなァァア!!」 「・・・う・・・うう・・・ ぼ・・・僕が・・・悪かった・・・謝る・・・き・・・君にも・・・ ルイズ・・・にも・・・ だから・・・た・・・助けてくれないか・・・お願いだ・・・」 その言葉に、ギアッチョの眼に明確な殺意が宿る。 「人をよォォ・・・殺そうとしておきながら・・・ え? 何なんだそりゃあ? まさかとは思うがよォォーーー 貴族だから殺されるはずがない・・・なんて 思ってたんじゃあねーだろーなぁあ」 ギーシュは朦朧とする意識の中で、必死に命乞いをする。 「・・・あ・・・ああ・・・思って・・・いた・・・ 僕が・・・悪かった・・・ だから 頼む・・・ お願いだ・・・死にたく・・・ないんだ・・・」 「人に道を作るのは『覚悟』だ・・・ てめーは負けて死ぬ『覚悟』がなかった ばかりか・・・ルイズに対して責任を取る『覚悟』すらねぇ・・・ 『覚悟』がない てめーはよォォーーー・・・! その命で責任を果たしてもらうぜェー!!」 ギアッチョはギーシュの首に力を込める! 「待って!やめてギアッチョッ!!」 声の主はルイズだった。ギアッチョはギーシュの首をつかんだままルイズを見る。 「何故止める?こいつは『覚悟』もなくおめーの命を侮辱した・・・ 償いは てめーの命でするべきだ」 「そうね・・・私は凄く悔しかったわ・・・だけどだからって殺すのは違うわ ギアッチョ、ここはあなたのいた場所じゃない・・・日々『覚悟』を持って 生きてる貴族なんかどれほどもいやしないわ あなたが思っているより ここはずっと甘くて怠惰な場所なの 常に『覚悟』と『責任』を果たさせようと するあなたはここでは異質な存在なのよ ・・・異質な平民の噂が宮中に 届けば・・・決闘だろうがなんだろうが関係ない あなたが何かをしでかす 前に 貴族を殺した罪で処刑されてしまうわ」 ギアッチョは色のない瞳でルイズを見つめる。 「・・・それに 私はギーシュに侮辱を償ってもらいたいんじゃないわ いつか魔法を使えるようになってこいつを見返してやりたいのよ」 それを聞いたギアッチョの双眸に、スッと色が戻る。そして、 ドサッ! ギーシュを投げ捨ててギアッチョはルイズに向き直る。 「しょーがねぇなぁぁ お嬢様の頼みとあっちゃあ仕方ねー これで 勘弁してやるとするぜッ マンモーニ!!」 ギアッチョがそう宣言すると、ギャラリーからどっと安堵の息が漏れ、 そして彼らを掻き分けるようにして派手な金髪の少女がギーシュに駆け寄る。 モンモランシーだった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1064.html
本日、学院の講義は無い。休日である。 タバサは自分の部屋にいた。 虚無の曜日に、『サイレント』の魔法をかけた自室で読書にふける。 一人で自分の世界に浸るのが彼女の最大の楽しみであった。 だが、本日のそれは突然の侵入者によって破られることになった。 先程からキュルケがタバサの目の前で何かを話しかけている。 大げさな身振り手振りも交えている。 『サイレント』の魔法により、何も聞こえることは無いが、 よほど何か重大なことを伝えたいのだろう。 3分ほど彼女の奇妙なダンスを満喫した後、『サイレント』の魔法を解除する。 とたんに騒がしくなった。 「だからね!私のダーリンがルイズと一緒にどこかに行っちゃったの!」 「虚無の曜日」 そう答えて、迷惑だといういことを表現する。 「私ダーリンに恋しちゃったの!それなのにあのヴァリエールなんかと一緒に馬に乗って行っちゃったわ!」 「だから行き先を突き止めるのにあなたの使い魔が必要なのよ!」 仕方が無い。これが他の人であれば、『エア・ハンマー』か何かを食らわせるのだが、無二の親友が、わざわざ自分の使い魔を頼りに来たのだ。 「分かった。…シルフィード」 「まったく、ロハンはいったいどこに行っちゃったのかしら?」 「俺に聞かれてもな…」 トリステインの城下町を、 ルイズとブチャラティはもう2時間も岸辺露伴を探し回っていた。 どちらとも徒歩である。 馬は門のそばにある駅に預けている。 事の起こりは、岸辺露伴が「画材を買ってくる」と、ルイズがまだ寝ている早朝のうちに街に出て行ってしまったことに始まる。 「ふぁぁぁ。あれ、ロハンは?」 ブチャラティは、起きて来たルイズにうっかり簡潔に答えてしまった。 「ロハンは(学院を)出て行った」 使い魔にすら見捨てられたと泣き出すルイズ。 ブチャラティがなだめるのに1時間。 「使い魔の癖に!勝手になにやってるのよ!」 やっと泣き止んだと思ったら、「使い魔の心得」とやらを1時間。 ロハンに対し猛烈に怒っているようだ。 「私もトリステインの街に行くわよ!準備して!」 「ひょっとして俺も行くのか?」 「当然でしょ!」 着替えながらルイズが叫ぶ。 ブチャラティは、主人に背を向けながらため息をつくのであった。 「あとはこの道ね…」 トリステイン城下町の主な道路を探しつくしたルイズたちは、とある路地裏を目の前にしていた。 ごみが散乱している。どこからか腐敗臭が立ち上っている。 ルイズは、「できれば一生立ち入りたくない」という表情をしている。 「大丈夫か?ルイズ?」 「使い魔の管理は貴族として当然の義務よ! それにロハンがブルドンネ通り沿いの画材屋で買い物した事は確実だし、この街にロハンがいるのは間違いないわ」 ブチャラティは先ほど聞き込みをした店を思い出していた。 道幅5メートルほどの道路に面したこぎれいな雑貨屋であった。 そこの店主によると、 「やたらそこらじゅうをスケッチして回る客が、大量に画材を買っていった。 その客はインクの『味』も確かめていた。」とのことである。 「まったく…こんなところをご主人様に探させるなんて…」 ブチャラティが、今日3回目の 「そんなに言うのならやめればいいじゃないか」のセリフを言おうとしたとき、 「あ!いた!ロハン!」 武器屋の看板をスケッチしている露伴の姿があった。 露伴自身はスケッチ道具以外何も持っていない。 かわりに、大人の身長ほどの高さになる、 袋いっぱいの画材を抱えている少年メイジが隣に立っていた。 「おや、ルイズとブチャラティ。奇遇だね。こんなところで会うとは」 「わざわざあなたを探していたのよ!ロハン! どのくらい時間をかけてと思っているの? あなた、出かけるときはご主人様に直接言いなさいよね!」 「悪かった。スマン」 「へ?」 あまりにもあっさり謝られる露伴にかえってびっくりしているようだ。 「それよりも僕はこの世界の武器に興味があるんだ。 よかったら案内してくれ」 ルイズにかまわずに武器屋に入っていく。 「ち、ちょっと待ちなさい」 「そうだ。待ってくれ。もう僕に荷物持ちをさせるのはカンベンしてくれ」 少年メイジが露伴に話しかける。 「まあいいじゃないか。ギーシュ君。 荷物が大きいから君は武器屋の外で待機していてくれ。 これは僕の『お願い』だ」 「…分かりました。露伴さん」 「貴族のダンナ。うちはまっとうな商売をしてまさあ。」 「ただの冷やかしよ」 「ああ、さいでっか」 (客ですらねーのかよッ!) ルイズと武器屋の親父のやり取りを尻目に、 岸辺露伴は手近な武器を手にとり、スケッチを開始していた。 「なるほどレイピアがあるぞ。 それにグラディウスやスクラマサクスもある。基本的になんでもありだな…」 この場においていかれた感のあるブチャラティは、ふと一本の片刃剣に目が行った。 「この剣… 近くでよく見るとすごく美しいな…」 「抜いてみるか…」 「その剣をぬくんじゃぁねーぜ!心をとられちまわあ」 突然、誰もいない方向から声がした。 「誰だ!」 ブチャラティは剣から手を離し、すかさず周りを警戒する。 が、誰もいない。 「うるせーぞデル公!」 店長が怒鳴る。 「今のはなんだ?」 「インテリジェンスソードってやつでさ。誰が考えたか知りやせんが、しゃべる剣なんです」 「これが『デル公』か」 ボロボロの剣をロハンが取り上げる。 「気安く触んじゃねーぞ!このやろう」 「面白いな、これ。買おう。いくらだ」 「新金貨百で結構でさ」 「ロハン、お前は『それが危ないかも』とか思わないのか?」 「いや全然。これはなかなか面白いぞ。ほれッ」 一振りの剣が、放物線を描いて宙を舞う。 「俺様はもっと繊細に扱えこのボケ!」 「裸身の剣を投げてよこすやつがあるか。 まあ、錆びてるから怪我はしないだろーがな…」 「…おでれーた。おまえ『使い手』か」 「『使い手』?」 「ふん?自分の実力も知らんのか。まあいい。お前らに買われるのならいいか」 「そのことなんだが…」ロハンが口を濁す。 「僕は先に画材を買ってしまってね。いま手持ちが百ないんだ」 「マヂで!俺様死亡フラグ?」 「ならばこうしよう。ルイズ?」 ブチャラティが口を続ける。 「君はこの前、決闘に善戦したご褒美を買ってくれると約束した。そのときの約束として、ロハンの手持ちに足りない分を足してくれ」 「いいの?あなた自身の希望は無いの?」 ルイズは不満そうだ。 「俺はいい。あえて言うなら毎朝カフェオレがほしいが…」 「…無理ね」 岸辺露伴が新金貨67を、ルイズが33を支払った。 「毎度」 ヴチャラティは店を後にし、露伴に『デルフリンガー』を手渡した。 「ほれ」 「ありがとう」 「先にいっとくがな!俺はテメーが…」 「なるほど、鞘に収めれば黙るのか」 店の外には、先ほどの少年メイジが忠犬ハチ公のように露伴を待ち構えていた。 「そうそう、この剣も君が持ってね。学院のルイズの部屋まで決して落とさずに持ってくるんだ。 これは僕の『お願い』だ。」 「…分かりました。露伴さん」 この珍妙な面々が武器屋から出て行くと、後をつけていたキュルケとタバサは武器屋のなかに入っていった。 「おや!珍しい。また貴族だ」 「ねえ御主人。先ほどのおかっぱ頭の方が何していたかご存知?」 「そういえば一振りの剣に興味を持っていたようですぜ? たしか、こいつ…」 夜。 トリステイン学院にて 「結局今日一日は露伴を探すだけだったわね」 ルイズたちの目の前をキュルケたちが無言で通り過ぎようとしていた。 「どうしたの、タバサ、それにキュルケ。ボロボロじゃない」 「…武器屋とキュルケを退治してた」 「?あんた達ケンカしてたの?仲良さそうに見えたのに…」 「…何も言いたくない…」 アヌビス神 → タバサのマジックアイテム『デグチ=ホソナール(Sサイズ)』にて捕獲。永久封印。 武器屋 → 営業中。店長の親父に『ミス・タバサの紹介』といえば、二割引してもらえる。 倉庫の奥から「えッ!俺もう出番ないの?」との声が時々聞こえる。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1007.html
フーケが破壊の杖を置いて行ったであろう場所は、時を置かず発見できた。 煌々と月明かりが大地を照らすハルケギニアでは、よほどの暗がりでもない限り明かりを用意せずとも光度は問題が無い。 ひとまず用心には用心を重ねようと、シルフィードを離れた場所に着地させ、ハーミットパープルで周囲に怪しい反応がないかも確認する。 だが三人の警戒を無駄にするかのように、ハーミットパープルのレーダーには何も反応を示すことは無かった。 「……ここまでされると本当に何もなかった時がバカみたいじゃの」 「確かにこんなに早く追跡されるだなんて考える方がおかしいんだけど。無用心だわね」 「逆に言えば、裏をかいたという事。今が奪還のチャンス」 そうと決まれば、まだシルフィードの背中ですやすやと寝息を立てているルイズも起こさなければならない。 ジョセフは波紋を練ると、太陽の光のように柔らかく光る両手をルイズの背に当てた。 人間は睡眠に落ちる際に自らの体温を低下させ、目覚めるに従って体温を上昇させる。寝起きが悪いのは体温の調整がうまく出来ないのも一因である。 それに体温が上昇すれば自然と寝苦しくなって―― 「ううっ……あ、暑い……」 ルイズの寝起きの悪さをよく知っているキュルケが驚くほどの早さで、ルイズは覚醒した。 「波紋って色んな使い方があるのねー。私も真剣に覚えてみようかしら」 普段の口調とは違い、かなり真剣に波紋の習得を検討するキュルケにルイズが噛み付くのを適当に宥めつつ、手短に事情を説明してから破壊の杖のある場所へ歩いていく。 そこは森の中でもやや開けた草むらで、その中央には随分と年季の入ったボロボロな小屋が一軒建っていた。 「地図から見るとあっこに破壊の杖があるようじゃな」 ハーミットパープルを使うまでも無く、周囲に人気が無いことは丸分かりである。 とは言え、それでもいざという時に備えて、外に見張りを立てた上で中に入ろうという計画が立てられる。 四人で相談した結果、キュルケとタバサが外で待機し、ジョセフとルイズが小屋に入るということで一応の決着を見た。 ルイズの前に立ち、身を屈めながらも心持ち早足に小屋へ接近すると、扉を押し開けて中へ入る二人。 ジョセフが波紋を全身に回せば、ほのかな光が小屋の中を照らす。 誰もいないと判っているはずなのに、ルイズは懸命に伸ばした腕の先で必死に杖を構えている。 杖の先が緊張を恐怖を如実に表わして震えているのが、ジョセフの苦笑を誘う。 「こらこら。見ての通り誰もおらんじゃろ? 気楽にしとけ気楽に」 「わわわわかんないじゃない、だだだ誰かいたらどうすんのよ!」 年頃の少女にとってはこのような状況が怖くないはずもないし、現にルイズはありもしない敵の幻影に警戒しすぎていた。 その気持ちはわからなくもないので、ジョセフはとりあえずルイズの手を握る。 「な……何するのよっ。勝手にご主人様の手握ってんじゃないわよっ」 目元を赤らめながら顔を背けるルイズだが、それでも無理に手を離そうとはしない。 「まあまあ。この哀れな使い魔めにご主人様の手を握る栄誉をお与えくだされ」 何かを言おうとしたルイズだが、結局しばらく口をパクパクさせた後で頷くだけだった。 とりあえず片手は繋いだまま、ハーミットパープルを発動させる。 手に持った宝物庫の欠片を媒介とした紫の茨は、すぐさまある一点に奔り、一抱えもある高価そうなケースに絡みつく。 「これが破壊の杖か?」 ひとまずケースを開けて確認すれば、その中身にジョセフは思わず驚きを露にした。 「……コイツが破壊の杖じゃと? どういうこっちゃ」 M72ロケットランチャー。映画や雑誌などで目にしたことはあるが、さすがのジョセフも実物を触るのは初めてのことである。 「それが何か知ってるの?」 「ああ。こいつぁ……わしの世界の兵器じゃぞ。なんでこんなモンが……」 手にとって使えるかどうか確認しようとロケットランチャーに触れたジョセフの左手が、今度こそ存在を強く主張するかのように手袋の中で眩く光る。 それと同時に、正確には知らないロケットランチャーの使い方が頭の中に『浮かんで』きた。 その感覚はデルフリンガーを掴んだ時にもあった感覚だが、その時に左手から漏れる光を感じたのはフーケとの交戦時もあわせて、今夜が二回目である。 やっと手袋を脱いで確認すれば、義手に刻まれたルーンが眩いほどの光を放っていた。 「……こいつぁ一体、なんなんじゃ……」 その答えはまだ誰からも提示されていない。ルーンを刻んだ張本人ともいえるルイズも、訝しげな顔をして光っているルーンを見ているだけだ。 「のうルイズや。一体わしに何が起こっとるんか判るかの」 「……えーと、ごめん。私にも何が何だか」 魔法が使えないだけで、様々な知識は豊富なルイズにも判らないとなれば、もはやお手上げとしか言う他はない。 得体の知れない力、という点で言えば生まれ持った波紋や、突然ある日発現したスタンドもあるので、さして不安材料にもならないのだが。 「とりあえずルイズや。こいつぁこっちの世界の人間にゃ使い方が判らんモンじゃからの。ひとまずこいつはわしが持っておく」 断りを入れて、背中にロケットランチャーを背負ってから、改めて狭い小屋の中を見渡す。ここをアジトと呼ぶには、あまりにも生活感の無さが目立ってしょうがない。 「うむ、となるともうここに用はありゃせん。出るぞ、ルイズ」 ルイズと共に小屋を出て、外で所在無さげに待機している二人と合流し、これからの行動を相談することにした。 「えーとじゃな、フーケは今この辺りにおるな。どうやら来た道をトンボ返りしとる」 「まさかまた学院に盗みに行く気かしら? それはそれで気合入ってるわね」 「破壊の杖が目的ではなく、学院を愚弄するのが目的とも考えられる」 「どっちにしたって、私達がバカにされたのは事実だわ! とっ捕まえてギャフンと言わせなきゃ気が済まないわ!」 約一名、バカにされたと憤っている少女が『フーケをとっ捕まえてギャフンと言わせる』のを強硬に主張する。 「んーまあそうじゃな。破壊の杖は取り戻しましたがフーケは逃しました、じゃ画竜点睛を欠くのもいいところじゃしな」 「そうそう。取られたものを取り返しただけじゃ、何の解決にもなってないわ。悪いネズミちゃんは捕まえて懲らしめてあげないとならないものね?」 「今から追跡を再開すれば夜明けまでに追いつく」 「そうとなれば善は急げだわ! さあみんな、フーケを捕まえに行くわよ!」 約一名、ここまであまり役に立っていない少女が意気揚々とシルフィードが待っている場所へと歩き出すが、約二名は苦笑混じりに、残り一名は感情を伺わせない顔をしながら彼女の後ろをついていく。 再びシルフィードが風を捕らえて空に飛んだ時には、ルイズも眠気を訴えるようなことはせずにバスケット一杯のイチゴを食べて目を見開いていた。 「覚えてなさいよフーケ……追いついたらギッタギタのメッタメタにしてやるわ!」 どこぞのガキ大将のような事を言うもんじゃのう、と苦笑するジョセフ。 それから程無くして、地図の上の金貨は小石に追いつこうとしていた。 「よしよし。もうそろそろフーケめに追いつくのう。さてここでわしは挟み撃ちの形を提案したい。四人全員でシルフィードに乗って追いかけても効率が悪いからの」 そこからジョセフは、シルフィードに乗ったまま追跡するグループと、フライで追跡するグループに分かれての攻撃を提案する。 スピードに勝るシルフィード組がフーケの進路に先回りしてフーケの移動を阻害しつつ、自由度に勝るフライ組がフーケを追い詰めるという作戦である。 その作戦自体には誰も異論を挟まない。だがその組分けに強固に反対する少女が一人いた。我らがゼロのルイズである。 シルフィード組とフライ組に分かれるということは、シルフィードを操るタバサは自動的にシルフィード組に回ることになる。 必然的にフライを使える残り一名であるキュルケはフライ組に回る。となると、ジョセフとルイズは別の組に回ることになる。 「ダメよダメよ! ツェルプストーの色情魔とジョセフを一緒にするのは反対!」 「じゃがのう。わしがシルフィードに乗っててもわしは何も出来んぞ。わしがキュルケに連れてってもらって、遊撃した方が戦力的にはちょうどいいんじゃぞ。 わしらじゃシルフィードを満足に操れるかどうか怪しいしな」 それからもしばらく駄々をこねていたルイズだったが、月明かりの下に馬を走らせている、宝物庫襲撃の時と同じローブ姿のフーケが見えるに至り、渋々ジョセフの案を承認した。 「ああん、こんなにダーリンと密着できるだなんてぇ。ダーリンのたくましい身体がス・テ・キ☆」 「アンタ、今からフーケをブッちめるってことを忘れてるんじゃないでしょうね!」 この期に及んでルイズをからかうことは忘れないキュルケと、挑発にいちいち乗るルイズ。 「ほらほら二人とも、そろそろ時間じゃぞ。気ぃ引き締めていかにゃならんぞ」 シルフィードの影でフーケに気取られることのないように距離に気をつけつつ。やがて街道が林の中を通ろうとする段階で、キュルケはジョセフを背負ったままフライの魔法で大空に飛び出し、地表近くの高度を維持してフーケ追跡行に入る。 それを見届けたシルフィードが、一気に加速し、林の木々にぶつからない高度を飛ぶことでフーケの頭上に影を落とす。 フーケは当然時ならぬ影に視線を上げ、頭上にいる風竜が前に回り込もうとしていることに気付き、速度を落としつつ街道を離れようとする。 しかし道の左右は林、夜の道を馬で走ることは非常に難しい。 馬を捨てて林の中を逃げるべきか、それともUターンして来た道を戻るか逡巡したところで、背後から猛スピードで追跡する一つの飛行物体が一気に距離を詰めてくる―― 「追いついたぞフーケッ!!」 キュルケに背負われたジョセフが、左手にデルフリンガー、右手にハーミットパープル、全身に波紋の光を構えて突進してくる! フーケはいちかばちか馬のまま林の中へ入ろうとしつつ、突っ込んでくる二人目掛けて魔法を唱えようとした、が…… 「行ってらっしゃいダーリンッ!!」 キュルケはフライで出せる最大限のスピードを維持したまま、ジョセフはキュルケの背を蹴って跳躍する! 加速したスピードのまま空を飛ぶジョセフは、ハーミットパープルを木の枝に巻きつけて速度を殺しつつも、なおもハーミットパープルをロープ代わりに林の木々を飛んでフーケへ急速接近していく! 「なッ!?」 予想外の行動に、ジョセフに一瞬気を取られてしまったフーケ。 「どこ見てんのよッ!!」 その一瞬の隙が、まだフライを解除していないキュルケの接近を許す結果となる! 全身に風を纏ったまま、ありったけのスピードで空を駆けるキュルケのタックルは、質量と速度が重なることで高い攻撃力を持つに至る。 「ぐはッ!?」 メイジと言えども、不意打ちを食らえばただの人間である。 キュルケのタックルをモロに食らったフーケは馬から落ち、地面に叩き落される。 だがフーケは地面に叩きつけられてなお、降参するどころかなおも抗う意思を示そうと、懐から素早く杖を取り出して呪文を詠唱していく! 「我が下僕達よ!!」 素早い詠唱で完成させた呪文は『錬金』。 ひとまずフーケは自分を囲むように三体のゴーレムを作り上げたが、素早く完成させるだけが取り得の『錬金』で完成したゴーレムは、30メイルのような大掛かりなものではなく、2メイルにも満たない土人形でしかない。 それでも腕力は普通の人間を大きく上回るだろうが、如何せんキュルケとジョセフの前では時間稼ぎ以外の何者でもなかった。 「ハーミットウェブッ!」 「ファイアーボールッ!」 頭上から奔る紫の茨と、正面から放たれる火の塊を防ぐだけで、一体はたっぷり波紋を流され爆散し、もう一体は火球を受け止め燃え尽きていく。 主人を守る為だけにその身を差し出したゴーレムだが、二人はなおも攻撃の手を休めようとせず追い討ちをかけてくる。 「くッ……調子に乗ってんじゃないよッ!」 しかしフーケも、キュルケのタックルを受けて落馬しながらも二人を相手取って戦闘を行おうとする時点で、今まで重ねてきた経験をここぞとばかりに発揮していた。 次に完成させた呪文は錬金ではなく、直前までゴーレムだった土塊を周囲に拡散させる『砂嵐』。 それで僅かにも二人の動きと視界を奪いつつ、意外と俊敏な動きで茂みに飛び込んだ! そしてシルフィード組のタバサとルイズが、シルフィードから降りてその現場に遅ればせながらやってくる次第だ、が。ルイズの不機嫌メーターは非常に危険な水域を示していた。 (何よ何よッ! デレデレしちゃって! 私だってフライさえ使えたら……!) 今頃、あそこで勇ましくフーケと戦っているのは自分のはずだったのだ。 それがあのにっくきキュルケというのがどうにも気に食わない。 今夜はタバサにメイドにジョセフがデレデレしてたのも気に食わないのに(ルイズ視点ではジョセフはタバサとシエスタにデレデレしているようにしか見えなかった)、それだけでは足りないと、よりにもよってあのキュルケとまで! 「このッ……アンタが来なかったらぁ!!」 今にも爆発しそうな(理不尽な)怒りをこらえつつ、茂みに飛び込んだフーケ目掛けて魔法を連発する! だがそれは残念ながら、フーケに利する行為となってしまった。 「ぬぅッ!?」 「きゃっ!? 危ないじゃないルイズッ!」 ルイズの失敗魔法が炸裂したのは、一瞬前までフーケがいた地点でしかなく、そしてそれはジョセフとキュルケからフーケの姿を見失わせ、二人の追撃の足まで止めてしまった。 その絶好のチャンスを指を咥えて見逃すはずも無いフーケは、林の中に微かに差し込む月明かりを頼りに決死の逃走を図る! ここでフーケと追跡者達の現状の差が如実に出た。 数と優位さで勝るジョセフ達に対し、一人しかおらず手負いとなったフーケ。彼女がとる行動は当然、命懸けでその場を離脱して状況を立て直すしかない。 仲間達が行動を共にするジョセフ達に対し、フーケが頼れるのは自分自身しかいない。余裕をもたらした弛緩と、決死の覚悟の差は、フーケの逃走を見事に成功させていた。 「いかんッ……ヤツを見失ったか!」 ハーミットパープルを伸ばし、なおも追跡を続行するジョセフ。 「何してんのよルイズッ! ああもうッ、なんてこと……!」 ルイズをからかう余裕さえ見せず、フーケの逃げた場所に照明弾代わりに火の塊を飛ばし、フーケの逃げた方向を注視するキュルケ。あと一歩のところまでフーケを追い詰めたというのに、それを逃した二人の失望はありありと横顔に出ていた。 ジョセフはともかく、キュルケが自分をからかいさえしないという事実は、ルイズの心を叱責するのには効果抜群だった。 (なっ……何よ! そんな反応するなんてっ……!) ルイズにとって予想外の反応を示されたばかりか、叱る時間も勿体無いとばかりにフーケに注意を傾ける仲間達。 ジョセフはハーミットパープルを伸ばし、直にフーケを追跡する。キュルケは照明代わりに火を飛ばし、隠れる闇を消していく。タバサは風を集めることで音を自分に集め、林の中を逃げるフーケがどこに向かおうとしているのかを感知しようとする。 だがルイズには何も出来ない。 魔法を使おうにも爆発するだけの魔法では、タバサの邪魔まですることになる。 フーケを追う意思だけは他の仲間よりも強いルイズは、意志の強さに反するように、何も追跡に役立つ手段を持ち合わせていなかった。 ――そして、フーケは反撃の体勢を整えた。 林の木々を飲み込みながら、巨大なゴーレムが立ち上がる。 それはジョセフ達を翻弄し、嘲笑ったものと同じ。 30メイルの巨人が、再びジョセフ達の前に立ちふさがる――! To Be Contined →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/210.html
【ワンポイントギーシュ】 砕けない使い魔(仗助)登場。レビテーションでC・Dを封じるなどギーシュには珍しく頭脳派。でも結構ゲス野郎。 露伴未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 絶頂の使い魔(ディアボロ)登場。杖を折られて殴られただけで被害は少ない。 使い魔は静かに暮したい(デッドマン吉良)登場。手を撃ち抜かれた後、足蹴にされた。その後も顔面を叩き壊されたり、怪我の絶えないギーシュ。 康一未登場。マスターがアンリエッタの為、出られてもチョイ役か? DIOが使い魔!?(DIO)登場。出るキャラみんなブラックの中、全身ハリネズミになって保険室送り。最近ようやっと復帰したらしい。 slave sleep~使い魔が来る(ブチャラティ)登場。ブチャラティに拷問されるが、モンモランシーの励ましもあって、脱・マンモーニ。妙に強い。ブチャラティに完全敗北するものの、ゲスにもならず目覚めた奴隷。……が、十四股をしていたことがばれ、制裁。 ジョセフ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの兄貴(プロシュート)登場。決闘中、ザ・グレイトフル・デッドによりミイラ同然にされた上、首の骨を折られて死亡。歴代ギーシュの中で一番不幸なギーシュ。 スターダストファミリアー(承太郎)登場。歴代ギーシュの中で一番優しく、紳士的なギーシュ。精神的成長を遂げるなど、ルイズ・承太郎に次ぐスタメン級の扱いを受ける。 見えない使い魔(ンドゥール)登場。二回殴られただけで、絶頂と並んで被害が少ない。 L・I・A(仗助)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 偉大なる使い魔(プロシュート)登場。肘打ちから踏みつけという兄貴の黄金説教コンボをくらう。同じ兄貴でもここまで扱いが違うのはすごい。 引力=LOVE?(徐倫)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの番鳥(ペットショップ)登場。肉の芽を植え付けられ、ルイズの忠実な下僕となる。なんかいつもニコニコしている。 ゼロと奇妙な鉄の使い魔(リゾット)登場。リゾットからは何もされることなく、二股相手に平手打ちをくらっただけ。歴代ギーシュの中で最も被害が少ないギーシュ。 フー・ファイターズ 使い魔のことを呼ぶならそう呼べ(FF)登場。のっけから二股を解消しているので、決闘に発展するか疑問視されていた。だが結局勘違いから決闘を申し込んだ。 ハルケギニアのドイツ軍人(シュトロハイム)登場。そこらへんのダメ将軍なんかよりもすごい指揮官っぷりを見せる。時間切れより決着つかず。 アナスイ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 法皇は使い魔(花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 亜空の使い魔(ヴァニラ・アイス)登場。DIOと並んで最も地獄に近いギーシュとされていたが、何と杖を折られただけで済んでしまった。その後、一部でヌケサクのあだ名が定着する。 白銀と亀な使い魔(亀ナレフ)登場。珍しく真面目なポルナレフに説教された。最後は墜落して保健室行き。 使い魔は皇帝<エンペラー>(ホル・ホース)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ACTの使い魔(康一)登場。康一君を無駄に痛めつけるなど最低のゲス野郎。康一から怒りの鉄拳制裁をくらい、舎弟フラグと低身長フラグが立つ。 几帳面な使い魔(虹村形兆)登場。覚醒したバッドカンパニーにワルキューレを吹っ飛ばされて降参。実は全く被害を受けていない。(だが決闘前に平手打ち、ワインのビンで殴られる、右ストレートのコンボを食らっている) ファミリアー・ザ・ギャンブラー(ダニエル・J・ダービー)登場。ダービーの計略によりワルキューレすら出せずにコイーン。 星を見た使い魔(空条徐倫)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 奇妙なルイズ(スタープラチナ)登場。瞬殺。 ゼロのパーティ(サイト、花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロと奇妙な隠者(ジョセフ)登場。他のギーシュ達とは逆に、ジョセフから決闘を申し込まれた。 ゼロの世界(リンゴォ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔波紋疾走(ジョナサン)登場。圧倒的な格の差を見せつけられ敗北。そんなジョナサンを見て成長するだろうか。 メロンの使い魔(花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? マジシャンズ・ゼロ(アヴドゥル)登場。マジシャンズ・レッドに恐れをなしてしまい、ギー茶を作ってしまった。社会的にかなりの被害を受ける。 老兵は死なず(ジョセフ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 凶~運命の使い魔~登場。ローリングストーンズにつぶされた。 微熱のカウボーイ(マウンテン・ティム)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 割れないシャボンとめげないメイジ(シーザー)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔の魂~誇り高き一族~(シーザー)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの予報図(ウェザー・リポート)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ポルポル・ザ・ファミリアー(ポルナレフ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの使い魔への道(ドラゴンズ・ドリーム)登場。はからずも龍の夢が予知した通りの未来になる。食堂に居た人達全てを不幸にしてキュルケから鉄拳制裁を受けた。 エルメェス未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 愚者(ゼロ)の使い魔(イギー)登場。しかし、決闘の場面をキング・クリムゾンされてしまった。 女教皇と青銅の魔術師(ミドラー)待望のギーシュ主役作品。が、いきなり死亡フラグが立った。 サーヴァント・ブルース 繰り返す使い魔(アバッキオ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? サブ・ゼロの使い魔(ギアッチョ)登場。ギアッチョに殺されそうになるが、ルイズの嘆願で一命を取り留める。 逆に考える使い魔(ジョースター卿)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの変態(メローネ)登場。もはや理解不能。 ゼロの究極生命体(カーズ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ディアボロの大冒険Ⅱ(ディアボロ)登場。俺TUEEEEEEEEE状態のディアボロに軽くあしらわれる。経験値要員としか見られていない。 アバッキオ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 鏡の中の使い魔(イルーゾォ)名前のみ登場。鏡の中の世界に引きずり込まれてそこで死亡。 ナランチャ・アバ・ブチャ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? はたらくあくま(デーボ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも。 start ball run(ジャイロ)登場。男の誇りを粉砕されるも、倍になって復活。そのあと男の世界に目覚めた模様。 サンドマン未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 爆炎の使い魔(キラークイーン)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔はゼロのメイジが好き(ストレイキャット)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 本気男(ホルマジオ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 新世界の使い魔(プッチ神父)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 戻る